2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(民主党・外交・安全保障)

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■形式要件についての評価(13点/40点)  

 民主党のマニフェストは冒頭で「民主党の理念」として「平和と繁栄の世界の実現にむけ、貢献する国をめざしています」と述べ、また「国民と国家の安全を守り、『開かれた国益』を追及」としている。次に5つの「重点政策」の4つめとして外交・安全保障を挙げ、そこでは「日米同盟を深化させることにより、守りを確実なものに」「アジアの共生を実現するため、経済面も含めた戦略的外交を推進」「途上国の貧困削減や民主化などを支援し、世界の平和、安定、繁栄に貢献」という3つの柱を書いている。
 数値目標が明記された政策はない。「アジア太平洋自由貿易圏の実現」「安保理常任理事国入りをめざす」など、個別の目標が明記されている政策は全体のおよそ2割である。
 達成時期及び財源の裏付けが明記されている政策はない。
 目標実現のための具体的な工程や手段の記述があるものは、沖縄県の負担軽減に関する政策など、全体のおよそ3割弱である。

 

 

■実質要件についての評価(20点/30点)

 「日米同盟の深化」「アジアの共生」「世界の平和・安定・繁栄に貢献」という方向性そのものは妥当であるが、「アジアの共生」が何を意味するのか明らかでなく、台頭する中国やそれに対する米国の戦略の変化と言った大きな流れを見据えた外交戦略も伺えない。日米同盟については「深化」「経済関係の強化」「沖縄の負担軽減」、アジア外交についても各国・地域との関係を「大局的見地から強化する」とのみ書いており、いずれも二国間の枠組みにとどまっている。地域的な広がりを持つ外交戦略という発想が見られるのは「アジア太平洋自由貿易圏の実現」を掲げた経済分野のみである。
 課題解決の手段としても、「精強な防衛力を着実に整備」「北朝鮮による核・ミサイル開発・配備などに対し、全力で対処する」など曖昧な記述が多い。領土に関する問題についての部分はほとんどが従来の日本政府の立場表明に過ぎず、具体的にどう解決するのか不明確である。特に尖閣諸島についての記述は政府の従来の公式見解を書いただけであり、「アジア外交」の欄にある「東シナ海を「平和、友好、協力の海」とするため、特に海洋分野で日中間の意思疎通を図る」と併せても、自らの政権下でこれだけ悪化した日中関係をどのように回復させるのかが全く明確でない。
 国際貢献の推進についても、PKO活動への参加の際に必ず問題となる集団的自衛権の問題をどうするのか、「ODAの活用」の財政的裏付けをどうするのか、という具体的かつ今までの民主党政権が解決できなかった課題の説明がない。TPPについても「政府が判断する」としか書かれておらず、交渉参加に意欲を示す野田首相の発言と比べ後退しており、自民党同様に腰が引けている。
 総じて、個別の政策は今まで日本政府が行ってきた政策の延長にすぎず、それが民主党政権の3年間でなぜ実現できなかったのか、今後どうすれば実現できるのかが明らかでなく、政権与党に求められるPDCAサイクルが機能していない。

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