民主党マニフェストの実現状況の検証(2012年11月27日現在)
5原則 2009年衆院選マニフェスト 言論NPO
実績評価
理由・備考
原則1 官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ 実現できず 鳩山元首相は、「政治主導確立法案」と「国会改革関連法案」を第174回通常国会に提出した。この法案が成立すれば政府の中に入る国会議員は73人から86人に増える予定だったが、2011年4月に民主党の政治改革推進本部の役員会で2法案とも取り下げることに決まり、第177回通常国会で撤回された。
原則2 政府と与党を使い分ける二元体制から、内閣の下の政策決定に一元化へ 実現できず 鳩山政権では、党の政策調査会を政官の癒着を生む温床として廃止し、政策決定の権限を内閣に一元化した。しかし、政策に関与できないことへの不満が党内で生じ、菅前首相は政策調査会を復活させた。また、野田首相は、党の政調会長または政策調査会の「部門会議」の了承を得なければ政府提出法案が閣議決定できない事前審査制を導入し、政策決定の政府一元化を撤回した。
原則3 各省の縦割りの省益から、官邸主導の国益へ 実現できず 内閣府に国家戦略局と行政刷新委員会、税制調査会を設置する「政治主導確立法案」を第174回通常国会に提出したが、第177通常国会で同法案は撤回され、官邸主導で国家ビジョンなどを策定する仕組みを作れなかった。
原則4 タテ型の利権社会から、ヨコ型の絆(きずな)の社会へ 道筋見えず 鳩山政権では、「新しい公共」を目指したが、強い市民社会への道筋は示せなかった。
菅政権では認定NPO法人への寄付によって税額控除を受けられる税制改正法と認定NPO法人の認定要件を緩和する改正認定NPO法を第177回通常国会で提出・成立させた。その結果、税制優遇によって寄付文化の定着が期待できるが、認定NPO法人の要件緩和はその増加にあまり寄与せず、それに加え質の低下が懸念されている。
原則5 中央集権から、地域主権へ 道筋見えず 地域主権改革は民主党の一丁目一番地の政策だったが、地域主権の全体像を示せず、中途半端なものとなった。その中で「義務付け見直し・条例制定権」に関する3法案を成立させ、また地方自治体の自由に使える資金を増やす「地域自主戦略交付金」を創設したが、これだけでは地方への権限・財源の移譲は不十分である。さらに、出先機関廃止法案を閣議決定したが、市町村側から反対され、法案提出が見送られるなど見通しの甘さが露呈した。
番号 2009年衆院選マニフェスト 民主党
実績検証
言論NPO
実績評価
理由・備考
1.現在の政策・支出を全て見直す
【政策目的】 ○自民党長期政権の下で温存された族議員、霞が関の既得権益を一掃する。
○政策コスト、調達コストを引き下げる。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
1 「行政刷新会議(仮称)」で政府の全ての政策・支出を、現場調査、外部意見を踏まえて、検証する。 実現 3 2009年9月に設置された行政刷新会議はこれまで、4回の事業仕分けを行ったが、全ての政策・支出を見直すことはできなかった。1回目の事業仕分けこそ政治家や識者が仕分け人として参加し、5000を超える行政事業のうち449事業を対象として、3兆円の歳出削減が掲げられて実施されたが、その中で2010年度概算要求からの予算削減額は9692億円にとどまり、事業仕分け結果の予算への反映の実効性が担保されていない。また、回を重ねるごとに、政治家である主務大臣も、自己の官庁の弁護に回るなど、当初の目的から乖離し始めている。
しかし、オープンな形で予算査定のあり方を見直す取り組みを導入しようとしたこと自体は、一定程度評価できる。
2 実施方法・調達方法を見直し、政策コスト・調達コストを引き下げる。 一部実施 3 事業の実施方法は、各省庁が自主的に事業を見直す行政事業レビューで検討されている。
調達方法に見直しについては、野田政権では、2012年3月に各府省において物品調達の内容と規模、契約の相手先、調達場所等に関する12年度調達改善計画が策定されたが、まだ計画段階であり、実施にはいたっていない
3 不要不急の事業、効果の乏しい事業は、政治の責任で凍結・廃止する。 一部実施 3 これまで4回実施された事業仕分けで「廃止」、「見直し」となった57事業で、単に名称を変更して事業を継続しようとしたり、評価結果を考慮せずに予算を増加させたりする問題が生じており、政治の責任で事業の凍結・廃止は実現できなかった。
2.特別会計、独立行政法人、公益法人をゼロベースで見直す。
【政策目的】 ○財政を透明にして、国民の政治に対する信頼を高める。
○税金のムダづかいを根絶する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
4 特別会計をゼロベースで見直し、必要不可欠なもの以外は廃止する。 一部実施 2 菅政権で実施した第3回目の事業仕分けを踏まえて、震災復興特会を除く17会計51勘定を、2015年末までに11会計26勘定に削減する特別会計改革法案を、野田内閣は第180回通常国会に提出したが、第181回臨時国会で審議未了となり、廃案。なお、実際に廃止されたとしても削減額は特別会計の総額約190兆の約2,824億円に過ぎない。
5 独立行政法人の実施する事業について、不要な事業や民間で可能な事業は廃止し、国が責任を負うべき事業は国が直接実施することとして、法人のあり方は全廃を含めて抜本的な見直しを進める。 一部実施 3 菅政権では、2010年12月に「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」を閣議決定し、独立行政法人98法人を廃止することとした。独立行政法人のあり方に関しては、野田政権で、独立行政法人制度を廃止し、行政法人制度を導入する「独立行政法人制度改革関連法案」を第180回通常国会に提出したが、第181回国会で審議未了となり、廃案。見直しは行ったが、抜本的な見直しには至っていない。
6 実質的に霞が関の天下り団体となっている公益法人は原則として廃止する。公益法人との契約関係を全面的に見直す。 一部実施 1 天下り先となっている公益法人を原則廃止とするための取り組みは見られない。
契約関係の見直しに関しては、監督省庁の権限強化によって公務員OBの給与水準と受け入れ人数等が適切かを判断することとなった。また、民主党と国民新党が、不適切な団体に対する予算や権限の見直しと公募制の導入を規定した「行政改革実行法案」を第180回通常国会に提出したが、成立せず。
3.国が行う契約を適正化する。
【政策目的】 ○政策コスト、調達コストの引き下げで税金のムダづかいを根絶する。
○政府調達をオープンにして、多くの国民が参加できるようにする。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
7 公務員OBを官製談合防止法の適用対象にする。 未着手 1 国会で公務員OBを官製談合防止法の適用対象にするような改正案が議論され、国会に提出された形跡はない。
8 随意契約、指名競争入札を実施する場合には、徹底的な情報公開を義務付ける。 一部実施 2 2010年3月鳩山政権では、随意契約とせざるを得ない法令上の根拠などを各府省が公開するよう定めた。その後、2011年7月に行政刷新会議がとりまとめた「公共サービス改革プログラム」では、公共調達に関する事後評価を拡充する旨を明記した。しかし、両施策のいずれも各府省に情報公開を義務づけてはおらず、また前政権と比べどれ程効果があったのか不明である。
9 契約の事後的検証と是正措置を担う「政府調達監視等委員会」を設置する。 一部実施 1 「政府調達監視等委員会」は設置されていない。
今は、各府省に設置された予算監視・効率化チーム等を軸として、調達の効率化や随意契約の見直し等についての取組を進めているだけである。
4.公務員制度の抜本改革の実施
【政策目的】 ○公務員に対する信頼を回復する。
○行政コストを適正化する。
○労働者としての公務員の権利を認め、優秀な人材を確保する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
10 2008年に成立した「国家公務員制度改革基本法」に基づき、内閣の一元管理による新たな幹部職制度や能力・実績に応じた処遇などを着実に実施する。 着手 2 菅政権では、幹部職における適格性審査の実施と内閣の一元管理を担う内閣人事局の設置を規定した「国家公務員制度改革法案」を第177回通常国会に提出したが、第181回臨時国会で廃案。なお、この法案には、2008年に成立した「国家公務員制度改革基本法」に規定された、能力及び実績に応じた処遇に関する記述はない。
11 定年まで働ける環境をつくり、国家公務員の天下りのあっせんは全面的に禁止する。 一部実施 3 2009年9月に鳩山元首相が天下りのあっせんの全面的禁止を各閣僚に指示したため、天下りのあっせんは禁止となった。しかし、定年まで働ける環境に関しては、公務員の定年延長は人件費の膨張につながり、また民間企業が再雇用で対応していることに考慮し、12年3月、野田首相は公務員の定年延長を見送った。
12 地方分権推進に伴う地方移管、国家公務員の手当・退職金などの水準、定員の見直しなどにより、国家公務員の総人件費を2割削減する。 一部実施 2 2012年2月に国家公務員の給与を平均7.8%削減する特例法案が成立した。また、12年3月に13年度の新規採用を09年度比で56%削減するが、両方合わせても総人件費の削減割合は1割程度であり、かつ、国の出先機関の地方移管などは具体化せず、マニフェストは守られなかった。
13 公務員の労働基本権を回復し、民間と同様、労使交渉によって給与を決定する仕組みを作る。 着手 2 国家公務員に労働協約権を付与する「国家公務員の労働関係に関する法律案」は、第177回通常国会に提出されたが、第181回臨時国会で廃案。今は、賃金と労働条件を労使交渉によって定める労働協約権が公務員に付与されていないため、人勧によらない人件費のカットをすると違憲となる可能性がある。
5.政と官の関係を抜本的に見直す
【政策目的】 ○政治主導を確立することで、真の民主主義を回復する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
14 与党議員が100人以上、大臣・副大臣・政務官等として政府の中に入り、中央省庁の政策立案・決定を実質的に担う。 一部実施 2 鳩山元首相は、第174回通常国会に「政治主導確立法案」と「国会改革関連法案」を提出した。この法案が成立すれば政府の中に入る国会議員は73人から86人に増加する予定だったが、2011年4月に民主党の政治改革推進本部の役員会で2法案とも取り下げることに決まった。その後、副大臣や政務官の増員を盛り込む法案は国会に提出されていない。
15 政治家と官僚の接触に係わる情報公開などで透明性を確保する。 未着手 1 具体的案な措置が取られた形跡なし。
6.企業団体献金・世襲を禁止する
【政策目的】 ○政治不信を解消する。
○多様な人材が政治家になれる環境を整備する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
16 政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金およびパーティー券購入を禁止する。
個人献金を普及促進するための税制改革を実施する。
当面の措置として、国や自治体と1件1億円以上の契約関係にある企業等の政治献金・パーティー券購入を禁止する。
着手 2 2011年、民主党は政治改革推進本部の役員会で、パーティー券も含めた企業・団体献金の全面禁止および個人献金を促す優遇制税を導入を柱とする政治資金規正法改正案を決めたが、国会に提出されなかった。
また、個人献金を普及促進するための税制改革についても、実施されていない。
クリーンな政治を目指すと言うことで民主党の党本部では企業献金を受け取っていないが、政党支部では企業献金を受け取っており、政治資金の中の企業献金のウェイトは大きい。
17 現職の国会議員の配偶者及び三親等以内の親族が、同一選挙区から連続して立候補することは、民主党のルールとして認めない。 実現 5 羽田孜元首相の後継として、羽田雄一郎氏の衆院選出馬が検討されたが、民主党の党内ルールを適用し、同一選挙区から連続して立候補することを認めなかった。
18 政治資金を取り扱う団体を親族に引き継ぐことは、法律で禁止する。 未着手 2 民主党が野党時の2009年9月に国会議員関係政治団体を親族に引き継ぐことを禁止する政治資金規正法改正案を衆議院に提出したが、審議未了で廃案となった。その後、同法案を再提出しておらず、法律で禁止するには至っていない。
19 誹謗中傷の抑制策、「なりすまし」への罰則などを講じつつ、インターネット選挙活動を解禁する。 着手 2 2010年の通常国会にて、ネット選挙の利用を拡大する公選法改正に向けた与野党協議が行われ、インターネットを使った選挙運動を合法とする旨などが合意にいたっていた。しかし、参議院選挙に突入し、同法の改正案を提出できず、未だ解禁には至っていない。
7.国会議員の定数を削減する
【政策目的】 ○行政改革を進めるとともに、政権交代が実現しやすい選挙制度とする。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
20 衆議院の比例定数を80削減する。参議院については選挙制度の抜本的改革の中で、衆議院に準じて削減する。 着手 2 2012年11月、民主・自民・公明3党で「衆議院議員定数削減に関する合意書」を取り交わし、次期国会終了まで結論を先送りした。これを踏まえ、小選挙区のウェイトが高めより政権が安定させるため比例定数を「80削減」するとの案を提示したが、連用性を組み込んだ「40削減」に修正し「公職選挙法改正案」を提出。第180回通常国会で審議入りしていたが、野田首相はその法案の成立を断念。
8.税金の使い途をすべて明らかにする      
【政策目的】 ○税金の使い途をすべて明らかにして、国民のチェックを受ける。
○決算を予算に反映させ、政策評価を徹底する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
21 予算編成過程を原則公開するとともに、執行を厳格に管理する。 一部実施 3 予算編成過程の公開に関して、「行政事業レビュー」では、各府省が原則すべての事業に関する支出先と資金使途を明らかにし、外部有識者の参加する公開プロセスを実施するため、一応執行は管理される。しかし、予算編成前に事業の効果を評価するため、各府省の概算要求枠が変化するわけではない。
22 決算に関する情報公開を徹底するとともに、提出時期を前倒しすることで予算との連動性を高める。 実現 2 民主党政権で決算の提出時期は早まった(2007年度決算国会提出:08年11月21日、2011年度決算国会提出:11年11月16日)が、予算と決算を連動することは出来ていない(2012年度予算概算要求締め切り:12年9月30日、11年度決算国会提出:12年11月16日)。
23 一般会計・特別会計について、企業会計に準じた財務書類の作成、国会提出を法定化する。 一部実施 1 検討の動きなし。
9.公平で、簡素な税制をつくる
【政策目的】 ○税制の既得権益を一掃する。
○租税特別措置の効果を検証し、税制の透明性、信頼性を高める。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
24 租税特別措置の適用対象を明確にし、その効果を検証できる仕組みをつくる。 実現 4 2010年度税制改正において、租特措置の適用を受ける法人が適用額の詳細を政府に報告する「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律(租特透明化法)」が制定された。この適用状況を2013年の通常国会で公表することになっている。ただ、政府に報告する企業やチェックを行う国税庁の負担が重く、費用対効果の面でどれだけの節税効果を上げられるのか、継続出来るのかが不透明である。それに加え、今後その情報をどのように活用するのかも検討課題になっている。
25 効果の不明なもの、役割を終えた租税特別措置は廃止し、真に必要なものは「特別措置」から「恒久措置」へ切り替える。 一部実施 3 「租税特別措置の見直しに関する基本方針」を踏まえ、10年度は国税で41 項目、地方税で57 項目を廃止又は縮減、11年は国税で50 項目を廃止または縮減した。しかし、1兆円規模のナフサ免税が存続するなど不透明な部分は残っている。
10.出産の経済的負担を軽減する【所要額:2000億円程度】
【政策目的】 ○ほぼ自己負担なしに出産できるようにする。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
26 現在の出産一時金(2009年10月から42万円)を見直し、国からの助成を加え、出産時に55万円までの助成をおこなう。 一部実施 1 衆院選では、出産一時金を55万円まで拡充すると公約したが、自民党政権下で措置された42万円を維持しただけで、追加的な政策に取り組んでない。
27 不妊治療に関する情報提供、相談体制を強化するとともに、適応症と効果が明らかな治療には医療保険の適用を検討し、支援を拡充する。 実現 2 2010年度から体外受精に関する助成を拡充したが、医療保険の適用はまだ実施されていない。
なお、不妊相談センターにて不妊に関する相談を行っているが、自民党政権から続いている政策であり、民主党で新規に実施したものはない。
11.年額31万2000円の「子ども手当」を創設する【所要額:5.3兆円程度】
【政策目的】 ○次代の社会を担う子ども1人ひとりの育ちを社会全体で応援する。
○子育ての経済的負担を軽減し、安心して出産し、子どもが育てられる社会をつくる。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
28 中学卒業までの子ども1人当たり年31万2000円(月額2万6000円)の「子ども手当」を創設する(平成22年度は半額)。 一部実施 3 当初月額2万6,000円支給する予定だった子ども手当が1万5,000円を支給する児童手当になり、さらに年少扶養控除を廃止したため、手当は増えたが、負担は自民党政権時よりも重くなる子育て世帯が生じる。
29 相対的に高所得者に有利な所得控除から、中・低所得者に有利な手当てなどへ切り替える 一部実施 3 所得控除から手当への切り替えによる中・低所得者の負担軽減は中途半端なものとなった。
当初は子ども手当を月額2万6,000円支給し、年少扶養控除と成年扶養控除、配偶者控除を廃止する予定だった。しかし、子ども手当は児童手当に移行し、支給額が減額されると同時に、成年分の扶養控除と配偶者控除が廃止されなかったため、高所得者に有利な所得控除は存続した。
12.公立高校を実質無償化し、私立高校生の学費負担を軽減する【所要額:9000億円程度】
【政策目的】 ○家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生・大学生が安心して勉学に打ち込める社会をつくる。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
30 公立高校生のいる世帯に対し、授業料相当額を助成し、実質的に授業料を無料とする。 実現 5 鳩山政権では、公立高等学校の授業料(約12万円)が無償となる「公立高校授業料無償化・高校等就学支援金制度」が第174回通常国会で成立し、2010年4月から施行された。
31 私立高校生のいる世帯に対し、年額12万円(低所得世帯は24万円)の助成を行う。 実現 3 鳩山政権では、所得に応じて私立高校生に就学支援金(年約12万円〜約24万円)を助成する「公立高校授業料無償化・高校等就学支援金制度」が第174回通常国会で成立し、2010年4月から施行される。しかし、朝鮮学校に対する支給は先送りされた。
32 大学などの学生に、希望者全員が受けられる奨学金制度を創設する。 実現 2 2009年度予算から12年度予算にかけて、奨学金制度の利用は有利子・無利子の双方で貸与人数・金額ともに拡大しているが、所得や学力などの要件が定められており、希望者全員が受給できるわけではない。
13.生活保護の母子加算を復活し、父子家庭にも児童扶養手当を支給する【所要額:500億円程度】
【政策目的】 ○ひとり親家庭の自立を支援する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
33 2009年度に廃止された生活保護の母子加算を復活する。 実現 5 2009年12月から母子加算が復活することとなった。10年度以降も継続して行われている。
34 母子家庭と同様に、父子家庭にも児童扶養手当を支給する。 実現 5 菅政権では、父子家庭に対する児童手当の支給を定めた児童手当法改正案を第174回国会で成立させ、2010年8月1日から施行。
35 5年以上の受給者等を対象に行っている児童扶養手当の減額制度を廃止する。 実現 3 2008年8月から児童扶養手当の減額制度の適用除外を受けられるが、減額制度自体は廃止されていない。それ故、制度自体を知らなければ5年後に支給額が半分となる。なお、12年6月野田政権で、児童扶養手当の減額制度の適用除外の利便性を高めるために事務負担を軽減する省令をに出した。
36 在宅就労の促進、保育所の優先入所、離婚時の養育費支払の履行確保などの総合的な支援策を講じる。 一部実施 4 政権交代後、ひとり親家庭への自立支援策を充実させるために経済対策に関する予算を拡充している。実際に、自立支援策の総額・経済的支援は、2009年:1754億円・1,665億円、10年:2,001億円・1,729億円、11年:1,887億円・1819億円となり、100億円から200億円近く増加。
14.保育所の待機児童を解消する
【政策目的】 ○縦割り行政になっている子どもに関する施策を一本化し、質の高い保育の環境を整備する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
37 小・中学校の余裕教室・廃校を利用した認可保育所分園を増設を進める。 一部実施 2 認可保育所分園の増設には取り組んでいるが、約2万5,000人の待機児童減少に有効な策を打てていない。
政府は2009年度と10年度の補正予算で、「安心こども基金」を積み増し、認可保育所の分園の設置に際して補助基準額や補助率を引き上げるとした。また、、12年度の概算要求では、待機児童解消促進等事業費に27億円を計上し、継続的に認可保育所分園を増設する予定だが、待機児童解消への道筋見えず。
38 「保育ママ」の増員、認可保育所の増設を進める。 一部実施 2 認可保育所の増設には取り組んでいるが、約2万5,000人の待機児童減少に有効な策を打てていない。
厚生労働省の2010年度予算では、保育者が自宅などで乳幼児を世話する「保育ママ」のための予算を前年度の2倍にあたる28億円計上し、11年度も12年度も増額させた。また、2012年度から「待機児童解消『先取り』プロジェクト」として124億円を計上し、上記の家庭的保育事業の充実を含め、認可保育所の増設を推進したが、その効果は小さい。
39 「子ども家庭省(仮称)」の設置を検討する。 着手 2 2012年9月、政府は総合的な子育て支援を実施する新たな行政組織の設置に向けた検討会の初会合を開き、「子ども家庭省」(仮称)の創設などについて、1年後を目途に中間報告を取りまとめる方針を確認したが、その後進展した様子はない。
15.全ての人に質の高い教育を提供する【所要額:600億円程度】
【政策目的】 ○学校の教育環境を整備し、教員の質と数を充実させる。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
40 全ての人にとって適切かつ最善な教育が保障されるよう学校教育環境を整備し、教育格差を是正する。 一部実施 3 「教育格差を是正する」と書かれているものの、その格差は何なのかが不明確であり、定量的に評価できない。仮に、学力とするならば、民主党世間化で全国の学力調査を廃止(県別ではある)していることから判断できない。また、所得によって教育の機会を失うことが格差であるなら、国公立高校までなら授業料は無償で通うことができる。しかし、マニフェストに掲げられた「教育格差」の定義があいまいなため、何をもって実現とするか曖昧であり、評価することはできない。
41 教員の資質向上のため、教員免許制度を抜本的に見直す。教員の養成課程は6年制(修士)とし、養成と研修の充実を図る。 着手 2 2012年6月に実施した文部科学省の中央教育審議会では、教員養成課程の6年制を先送りすることになった。その代わりに、新たな免許状の案を議論しているが、まだ検討段階である。
42 教員が子どもと向き合う時間を確保するため、教員を増員し、教育に集中できる環境をつくる。 一部実施 3 11年度、12年度における教職員定数の加配定数は、4000、3900となり、その加配定数の増員によって1、2年生では35人学級が実現した。しかし、少人数学級が実現しているのは、まだ小学1、2年生学級に過ぎず、今後その他の学年にも適用するための財源を確保できるのかは不透明である。
43 公立小中学校は、保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参画する「学校理事会」が運営することにより、保護者と学校と地域の信頼関係を深める。 一部実施 1 「学校理事会」は設置されていない。
44 現在の教育委員会制度を抜本的に見直し、教育行政全体を厳格に監視する「教育監査委員会」を設置する。 着手 1 「教育監査委員会」は設置されていない。
大津市のいじめ問題などを受け、地方自治体側などから制度の見直しを求める動きが出ているが、政府側から具体的な対応は示されていない。
45 生活相談、進路相談を行うスクールカウンセラーを全小中学校に配置する。 実現 3 2010年度と11年度、12年度の概算要求では、スクールカウンセラーを設置するための予算が計上されたが、全小中学校には配置できていない。10年度は小学校の数を前年の3650校から1万校に増やすことを、11年度は小学校1万2000校と中学校9902校に増やすことを目標としている(2012年8月27日公表の学校基本調査によると、全小学校数:2万1460校、全中学校数:1万699校)。
46 国際社会の中で、多様な価値観を持つ人々と協力、協働できる、創造性豊かな人材を輩出するためのコミュニケーション教育拠点を充実する。
実現 3 2010年度からコミュニケーション教育を充実させるための予算が確保されたが、その対象は演劇活動を中心とした文化芸術体験授業の支援であり、それを推進することによって、どのように国際社会に適応する人材を輩出するのかの道筋が全く見えない。
16.年金記録被害者への迅速な補償のため、一定の基準の下で、「一括補償」を実施する【所要額:2000億円程度】
【政策目的】 ○年金記録問題の被害者の補償を一刻も早く進める。
○年金記録問題の再発を防ぐ。
○公的年金制度に対する国民の信頼を回復する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
47 「消えた年金」「消された年金」問題への対応を「国家プロジェクト」と位置づけ、2年間、集中的に取り組む。 一部実施 3 政権交代から2年間毎年約1,000億円の予算を計上し、年金記録問題の解決に取り組んだが、約5000万の消えた年金うち照合されたのは12年8月17日時点1661万件であり、未だ解決されていない。
48 年金記録が誤っている可能性の高い受給者等を対象に、記録訂正手続きを簡略化する。 実現 3 民主党政権では、年金記録回復基準の条件を追加し、一定の条件に該当する受給者が簡略化した記録訂正手続きを受けられるようにしたが、政府の訪問による記録確認作業はその該当者の一部にしか実施しておらず、そもそも受給者が改ざんされたことを認知していない可能性がある。
49 コンピューター上の年金記録と紙台帳の記録の全件照合を速やかに開始する。 一部実施 3 2010年3月、日本年金機構は4年間で全件照合を実現するという目標を立て、同年10月に全件照合作業を始めた。しかし、09年12月に長妻厚生労働大臣からその目標を断念する旨の発言があり、また11年5月に厚生労働省が民主党に全件照合を断念する方針を伝えるなど、全件照合の見通しは立っていない。
50 年金記録を訂正した人が、本来の年金受給額を回復するまでの期間を大幅に短縮する。 実現 4 年金の申請から支払いまでの期間は、過去5年分については7.2ヶ月(21年3月)から 2.5ヶ月(24年6月)に、5年以上前の分については10.0ヶ月(21年3月)から 4.2ヶ月(24年6月)に短縮化された。しかし、民主党政権誕生時に年金の問題を頻繁に取りあげ、国民からの期待を得ていたことからすると、実現までに時間がかかったことは減点要因。
51 全ての加入者に「年金通帳」を交付し、いつでも自分の年金記録(報酬月額を含む)を確認できるようにする。 着手 2 年金通帳の交付は断念。その代わり、インターネット上で年金情報を確認できる「e−年金通帳」を13年度を目途に導入する予定である。ネットが活用できない場合は市町村などの窓口で確認できるが、ネットが活用できない人の利便性は年金通帳よりも後退。
17.年金保険料の流用を禁止する【所要額:2000億円程度】
【政策目的】 ○公的年金制度に対する国民の信頼を回復する。
○保険料流用を禁止することで、年金給付の水準を少しでも高める。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
52 年金保険料は年金給付だけに充当することを法律で定める。 未着手 1 2010年度予算の社会保険関連事務費などの事業費(4475億円)のうち、年金保険料から2046億円が充てられ、12年度予算では1925億円を計上しており、年金保険料を年金給付だけに充当するための法律の改正には至っていない。
18.一元化して公平な年金制度へ
【政策目的】 ○公的年金制度に対する国民の信頼を回復する。
○雇用の流動化など時代にあった年金制度、透明で分かりやすい年金制度をつくる。
○月額7万円以上の年金を受給できる年金制度をつくり、高齢期の生活の安定、現役世代の安心感を高める。
53 以下を骨格とする年金制度創設のための法律を平成25年までに成立させる。

・全ての人が同じ年金制度に加入し、職業を移動しても面倒な手続きが不要となるように、年金制度を例外なく一元化する。
・全ての人が「所得が同じなら、同じ保険料」を負担し、納めた保険料を基に受給額を計算する「所得比例年金」を創設する。
・消費税を財源とする「最低保障年金」を創設し、全ての人が7万円以上の年金を受け取れるようにする。「所得比例年金」を一定額以上受給できる人には、「最低保障年金」を減額する。
着手 1 3党の「確認書」では、今後の公的年金制度にかかる改革については、あらかじめその内容について三党間で合意に向けて協議するとしている。また、社会保障制度改革推進法では、今後の公的年金制度について、財政の現状及び見通し等を踏まえ、社会保障制度改革国民会議において検討し、結論を得るとされており、まだ先行きは不透明。
19.年金受給者の税負担を軽減する【所要額:2400億円程度】
【政策目的】 ○年金受給者の負担を軽減し、高齢者の生活の安定を図る。
54 公的年金控除の最低補償額を140万円に戻す。 未着手 1 何ら進展なし。
55 老年者控除50万円を復活する。 未着手 1 何ら進展なし。
20.歳入庁を創設する
【政策目的】 ○年金保険料のムダづかい体質を一掃する。
○年金保険料の未納を減らす。
56 社会保険庁と国税庁を統合して、「歳入庁」とし、税と保険料を一体的に徴収する。 着手 1 社会保障と税の一体改革法案における民主、自民、公明の3党合意では、歳入庁は保険料徴収の一手段となった。
57 所得の把握を確実に行うために、税・社会保障制度共通の番号制度を導入する。 着手 2 2012年2月14日に政府は「マイナンバー法案」を閣議決定し、国会へ提出したが、審議未了で廃案となった。なお、2012年11月22日の記者会見で岡田副総理はマイナンバー制を当初の目標の15年1月までに導入するのは難しいとの見解を示した。
21.後期高齢者医療制度を廃止し、国民皆保険を守る【所要額:8500億円程度】
【政策目的】 ○年齢で差別する制度を廃止して、医療制度に対する国民の信頼を高める。
○医療保険制度の一元的運用を通じて、国民皆保険制度を守る。
58 後期高齢者医療制度・関連法は廃止する。廃止に伴う国民健康保険の負担増は国が支援する。 着手 2 後期高齢者医療制度の最終的な扱いは民自公の3党協議をふまえ「社会保障制度改革国民会議」に委ねられることになったが、自民党は民主党へ制度廃止の撤回を求めており、制度廃止の道筋は見えていない。
59 被用者保険と国民健康保険を段階的に統合し、将来、地域保険として一元的運用を図る。 着手 1 何ら進展なし。
22.医療崩壊を食い止め、国民に質の高い医療サービスを安定的に提供する【所要額:9000億円程度】
【政策目的】 ○医療従事者等を増員し、質を高めることで、国民に質の高い医療サービスを安定的に提供する。
○特に救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建し、国民の不安を軽減する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
60 自公政権が続けてきた社会保障費2200億円の削減方針は撤回する。医師・看護師・その他の医療従事者の増員に努める医療機関の診療報酬(入院)を増額する。 実現 4 民主党政権では、自公政権が続けてきた社会保障費2,200億円の削減方針を撤回し、2012年診療報酬改定においては、前回10年の改定に引き続き2回連続でネットでのプラス改定(+0.004%)を行った。しかし、診療報酬の改定による医療従事者の増員だけでは、地方の過疎地における医療サービスの向上にはつながらない。
61 OECD平均の人口当たり医師数を目指し、医師養成数を1.5倍にする。 着手 2 2009年12月に医学部学生の定員数360人増が了承され、総定員は8846人になり。11年度と12年度も医学部定員数が増加したが、1.5倍に達する見込みはない。また、医師数も08年の28万6699人から10年の29万5049人に増えたが、OECDの人口当たり医師数の平均値(人口比率で3人/1000人、現在の日本の人口で38万4178人の医師数)には、遠く及ばない。
62 国立大学付属病院などを再建するため、病院運営交付金を従来水準へ回復する。 実現 2 10年度の附属病院運営費交付金は09年に比べ59億円増加し、288億円となったが、独立行政法人化当初の04年度(584億円)に比べ約半分と従来水準を大幅に下回っている。なお、11年度および12年度予算ではそれぞれ134億円、63億円となり、次第に減少している。
63 救急、産科、小児、外科等の医療提供体制を再建するため、地域医療計画を抜本的に見直し、支援を行う。 一部実施 3 2011年12月に開催された「医療計画の見直し等に関する検討会」では、二次医療圏の設定基準の見直しおよび医療計画の評価・公表に対する指針が提案されたが、それがどこまで実施されるかは今後注視する必要がある。なお、11年度及び12年度予算に、医師の不足した医療機関に対して医師の確保のために支援を行う地域医療支援センターの予算を盛り込んだ(23年度予算額5.5億円、24年度予算額7.3億円)。
64 妊婦、患者、医療者がともに安心して出産、治療に臨めるように、無過失補償制度を全分野に広げ、公的制度として設立する。 着手 2 2011年8月に発足した「医療の質の向上に資する無過失補償制度等のあり方に関する検討会」では、患者・家族または遺族を救済する観点から、無過失補償制度のあり方と医療事故の再発防止の仕組み等について検討しているが、公的制度の設立に向けた具体的な動きはない。
23.新型インフルエンザ等への万全の対応、がん・肝炎対策の拡充【所要額:3000億円程度】
【政策目的】 ○新型インフルエンザによる被害を最小限にとどめる。
○がん、肝炎など特に患者の負担が重い疾病等について、支援策を拡充する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
65 新型インフルエンザに関し、危機管理・情報共有体制を再構築する。ガイドライン・関連法制を全面的に見直すとともに、診療・相談・治療体制の拡充を図る。ワクチン接種体制を整備する。 実現 3 新型インフルエンザワクチン自給体制の確立と「新型インフルエンザ対策行動計画」におけるガイドラインの改定、新型インフルエンザに対する枠組みを規定する「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の公布などは評価できる。しかし、2012年6月の都道府県担当課長会議の質疑応答集を見ると、国と都道府県の役割が不明瞭で危機発生時の連携体制が整備されていないという問題を抱えている。
66 乳がんや子宮頸がんの予防・検診を受けやすい体制の整備などにより、がん検診受診率を引き上げる。子宮頸がんに関するワクチンの任意接種を促進する。化学療法専門医・放射線治療専門医・病理医などを養成する。 一部実施 3 乳がんや子宮頸がん関連の施策によって受診率は上がっているが、「がん対策基本計画」の目標水準に達する見込みはない。
女性特有のがん検診については既に無料クーポンの配布などを2009年度から行っており、また、この子宮頸がんのワクチン事業促進のために10年度と11年度で補正予算を組み、さらに乳がんや子宮頸がんの予防・検診を受けやすい体制の整備は進んでいる。しかし、国立がん研究センターによると、子宮がん・乳がんの受診率は、2007年の24.7%・24.5%から、2010年の30.6%・28.7%に増加したが、5年以内に50%を目標とした「がん対策推進基本計画」の実現は困難。
67 高額療養費制度に関し、治療が長期にわたる患者の負担軽減を図る。 着手 1 高額療養費制度の抜本改革に関しては、財源の確保が困難であるため具体案の策定に至っていない。
ただ、2012年4月1日からは外来診療も、同一医療機関での同一月の窓口負担が自己負担限度額を超える場合は、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる取扱い(高額療養費の外来現物給付化)は導入される。
68 肝炎患者が受けるインターフェロン治療の自己負担の上限を月額1万円にする。治療のために休業・休職する患者の生活の安定や、インターフェロン以外の治療に対する支援に取り組む。 実現 3 2010年1月に肝炎対策基本法が施行され、10年度から肝炎治療の自己負担の上限が原則月額1万円に引き下げられるとともに、インターフェロン治療以外のB型肝炎への核酸アナログ製剤治療を医療費助成の対象に追加した。しかし、休業・休職する患者に対する施策を講じることは出来なかった。
24.被爆者を援護する
【政策目的】 ○被爆者を早急に救済する。
69 高齢化している被爆者を早急に救済するため、被爆実態を反映した新しい原爆症認定制度を創設する。 着手 2 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)は被爆者全員を対象にした制度の新設などを求めて いるが、未だ実現されず。なお、政府では、2012年6月28日原爆症認定制度を見直す厚生労働省の検討会が開かれ、現行制度を基に今後必要に応じて被爆者援護法改正などの改善策を検討するとの中間報告をとりまとめた段階である。
70 被爆二世、在外被爆者を含め、被爆者の健康管理を拡充する。 一部実施 2 被爆者援護法の改正によって2010年12月15日から日本国外で在外被爆者も支援を受けられるようになった。しかし、被爆二世に関しては科学的な立証が困難との見方も多く、それらに関する政策は進んでいない。
25.介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる【所要額:8000億円程度】
【政策目的】 ○全国どこでも、介護の必要な高齢者に良質な介護サービスを提供する。
○療養病床、グループホーム等の確保により、介護サービスの量の不足を軽減する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
71 認定事業者に対する介護報酬を加算し、介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる。 一部実施 1 政権交代後介護従事者の賃金は上昇したが、4万円には達せず、かつ単に自民党の案を実行しただけにすぎない。
2009年度の介護報酬改定により介護従事者の賃金が一人当たり約9000円引き上げられ、09年度第1次補正予算で09年10月から11年度末まで一人当たり1万5000円を支給する「介護職員処遇改善交付金」を創設。12年度以降は財源を安定化するために、介護報酬に組み込まれた。しかし、これらの引き上げは自公政権の案を単に実行したに過ぎず、また4万円には届いていない。
72 当面、療養病床削減計画を凍結し、必要な病床数を確保する。 実現 3 野田首相は介護保険関連法改正案を第177回通常国会に提出・可決させ、療養病床削減計画を17年まで凍結した。しかし、療養病床の不足地域と余剰地域が偏在している状況を改善する見込みはない。
26.「障害者自立支援法」を廃止して、障がい者福祉制度を抜本的に見直す【所要額:400億円程度】
【政策目的】 ○障がい者等が当たり前に地域で暮らし、地域の一員としてともに生活できる社会をつくる。
73 わが国の障がい者施策を総合的かつ集中的に改革し、「国連障害者権利条約」の批准に必要な国内法の整備を行うために、内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置する。 実現 3 2009年12月、鳩山政権は「障がい者制度改革推進本部」の設置を閣議決定した。2012年8月時点で開かれた本部の会合は4回。改革推進会議では継続的に会議が開かれ、当事者過半数の委員会開催、インターネット中継など、積極的に取り組んでいることは評価できる。しかし、会議で議論されたことをどのように政策に落とし込み、条約批准に向けた道筋を描いているか、具体的に見えない。
74 「障害者自立支援法」は廃止し、「制度の谷間」がなく、サービスの利用者負担を応能負担とする障がい者総合福祉法(仮称)を制定する。 実現 3 12年6月20日、参議院本会議で障害者サービスの適用対象を拡大する「改正障害者自立支援法」および「障害者総合支援法案」が成立した。しかし、障害者自立支援法で問題となった障害者の医療費1割負担およびこれまで障がい者制度改革推進会議総合福祉部会で検討されてきた障害者福祉サービスの原則無料化等は棚上げされた。
27.霞が関を解体・再編し、地域主権を確立する
【政策目的】 ○明治維新以来続いた中央集権体制を抜本的に改め、「地域主権国家」へと転換する。
○中央政府は国レベルの仕事に専念し、国と地方自治体の関係を、上下・主従の関係から対等・協力の関係へ
 改める。地方政府が地域の実情にあった行政サービスを提供できるようにする。
○地域の産業を再生し、雇用を拡大することによって地域を活性化する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
75 新たに設立する「行政刷新会議(仮称)」で全ての事務事業を整理し、基礎的自治体が対応可能な事務事業の権限と財源を大幅に移譲する。 一部実施 2 「行政刷新会議」が実施した第一回目の事業仕分けでは、事業の地方への移譲も含め議論されたが、地方への移譲は進んでいない。また、事務作業の整理および基礎的自治体への権限と財源の移譲は、「行政刷新会議」ではなく、「地域主権戦略会議」で検討されてきた。これまで「義務付け・枠付けの見直し」あるいは「地域自主戦略交付金」によって権限と財源の移譲が試みられてきたが、あまり進んでいない。
76 国と地方の協議の場を法律に基づいて設置する 実現 5 2011年4月に成立した「国と地方の協議の場に関する法律」に基づき、国側からは内閣官房長官や総務大臣など、地方側からは全国知事会長などをメンバーに、本体会合11回、分科会4回を開催した(2012年11月時点)。
77 国から地方への「ひも付き補助金」を廃止し、基本的に地方が自由に使える「一括交付金」として交付する。義務教育・社会保障の必要額は確保する。 一部実施 2 2011年度に省庁横断的に補助金の事業・年度間融通を認める「地域自主戦略交付金」が導入され、11年度には5,120億円(8事業)、12年度には8,329億円(18事業)が計上された。2011年は都道府県だけ、2012年は指定都市まで加えたが、通常の市町村への一括交付金として交付するまでには至っていない。
なお、地方団体向け国庫補助金負担金の12年度総額は23兆円あり、その中で社会保障16兆円、文教・科学振興は2.2兆円は対象になっておらず、一括交付金化は部分的に実施されただけである。
78 「一括交付金」化により、効率的に財源を活用できるようになるとともに補助金申請が不要になるため、補助金に関わる経費と人件費を削減する。 一部実施 2 補助金の一括交付金化により、事務手続きが楽になり自治体の手間がかからなくなり、コスト削減になると思われていた。しかし、事前申請は必要なくなったが、交付金を受けるために、自治体側は各省庁と事業の手続きをしなければならず、自治体・省庁の手間についても補助金時からかわらなかった。当初想定していた人件費や経費の大きな削減には至っていない。
28.国の出先機関、直轄事業に対する地方の負担金は廃止する
【政策目的】 ○国と地方の二重行政は排し、地方にできることは地方に委ねる。
○地方が自由に使えるお金を増やし、自治体が地域のニーズに適切に応えられるようにする。
79 国の出先機関を原則廃止する。 着手 2 民主党の出先機関廃止に関する法案は、市町村の反発が大きく、第181回臨時国会への提出は見送られた。
2012年11月政府は、国の出先機関を「特定広域連合」へ移管する改革法案を閣議決定し、ブロックで受け皿ができ、手を挙げてきた場合に、地方整備局と地方経産局、環境事務所の3つの出先機関の移管・廃止を協議することとした。提出が見送られた背景には、東日本大震災後の災害対応の際に東北地方整備局が活躍し、現行の法案に対する市町村からの反発が大きかったという事情がある。
80 道路・河川・ダム等の全ての国直轄事業における負担金制度を廃止し、地方の約1兆円の負担をなくす。それに伴う地方交付税の減額は行わない。 一部実施 3 「直轄事業負担金」について維持管理に関する負担金については、10年・11年で段階的に廃止した。しかし建設事業に関する負担金についての議論は進んでいない。
29.目的を失った自動車関連諸税の暫定税率は廃止する【所要額:2.5兆円程度】
【政策目的】 ○課税の根拠を失った暫定税率を廃止して、税制に対する国民の信頼を回復する。
○ 2.5 兆円の減税を実施し、国民生活を守る。特に、移動を車に依存することの多い地方の国民負担を軽減する。
81 ・ガソリン税、軽油取引税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率は廃止して、2.5兆円の減税を実施する。 未着手 2 2010年度の税制改正大綱では、ガソリン税と軽油引取税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率は廃止するが、税率は維持する旨の記載があり、実質的に上記の自動車関連税は維持された。
・将来的には、ガソリン税、軽油引取税は「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化 一部実施 3 2012年に地球温暖化対策税(初年度391億円 / 28年以降2,623億円)を導入したが、ガソリン税と軽油取引税はまだ地球温暖化税として一本化されていない。
・将来的には、自動車重量税は自動車税と一本化、自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止する。 一部実施 2 自動車重量税は自動車税と一本化されておらず、また自動車取得税は廃止は2015年3月まで先送りされた。
30.高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る【所要額:1.3兆円程度】
【政策目的】 ○流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる。
○産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する。
○高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの経済的損失を軽減する。
82 割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していく。
一部実施 2 2010年6月より高速道路無料化の社会実験を実施したが、東日本大震災後、復興費用を確保する目的で高速道路無料化を断念した。
31.戸別所得補償制度で農山漁村を再生する【所要額:1.4兆円程度】
【政策目的】 ○農山漁村を6次産業化(生産・加工・流通までを一体的に担う)し、活性化する。
○主要穀物等では完全自給をめざす。
○小規模経営の農家を含めて農業の継続を可能とし、農村環境を維持する。
○国土保全、水源かん養、水質浄化、温暖化ガス吸収など多面的な機能を有する農山漁村を再生する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
83 農畜産物の販売価格と生産費の差額を基本とする「戸別所得補償制度」を販売農家に実施する。 実現 3 戸別所得補償は、11年度からの水田向けの本格実施に加え、麦、大豆などの畑作物に対象を拡大して実施され、マニフェストを形式的に実現した。しかし、マニフェストでは「小規模農家の維持」と「産業化」を同時に実現することを目的としているが、戸別所得補償は大規模農家にメリットがあり、小規模農家の維持にはほとんど寄与していない。さらに、水田農業の建て直しという課題の解決にも道筋を示せていない。
84 所得補償制度では規模、品質、環境保全、主食用米からの転作等に応じた加算を行う。 実現 3 民主党は規模加算を11年度と12年度に実施したが、対象を生産調整に参加しているモノに限定した。実際に使用されたのは3割程度と、規模拡大という農家の構造転換のための政策としては不十分だった。
85 畜産・酪農業、漁業に対しても、農業の仕組みを基本として、所得補償制度を導入する。 実現 2 畜産・酪農に関して、2010年度から毎年、畜種ごとの特性に応じた経営安定対策を実施。しかし、これは1965年に成立し、2000年に大改正した不足払い法に基づく制度であり、民主党の成果はない。
漁業に関して、水産資源の管理・回復を図りつつ、漁業者が将来にわたって持続的に漁業経営を維持できる環境を整備していくため、2011年度より、資源管理・漁業所得補償対策を実施。収入減少や燃油価格高騰の際の補填として2012年度438億円を計上した。しかし、漁業の再生につながるかは不透明。
86 間伐等の森林整備を実施するために必要な費用を森林所有者に交付する「森林管理・環境保全直接支払制度」を導入する。 実現 3 2012年4月の改正森林法の全面施行に伴い、森林経営計画に基づく搬出、間伐等の森林整備に対する支援を本格的に実施。2012年度予算として314億円が措置された。しかし、これが「森林・林業再生プラン」で設定した「10年後の木材自給率50%以上」に資するものか否かは今後の実施状況で判断する必要がある。
32.食の安全・安心を確保する【所要額:3500億円程度】
【政策目的】 ○国民が安全な食料を、安心して食べられる仕組みをつくる。
○食品安全行政を総点検する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
87 食品の生産、加工、流通の過程を事後的に容易に検証できる「食品トレーサビリティシステム」を確立する。 着手 1 菅政権で策定した「食料・農業・農村基本計画」において、米殻以外の新食料品についても入出荷記録の作成・保存の義務付けについて検討する旨を規定しているが、具体的な動きはない。
88 原料原産地等表示の義務付け対象を加工食品等に拡大する。 一部実施 2 加工食品は様々な原材料を使用しており、その全ての原料原産地を表示することになると膨大なコストを負担せざるをえず、実現は困難である。現時点で原料原産地表示を拡大出来たのは、「黒糖及び黒糖加工品」と「こんぶ巻」だけである。
89 主な対日食料輸出国に「国際食品調査官(仮称)」を配置して、輸入検疫体制を強化する。 一部実施 1 何ら進展なし。
90 BSE検査としての全頭検査に対する国庫補助を復活し、また輸入牛肉の条件違反があった場合には、輸入の全面禁止等直ちに対応する。 着手 1 2012年度までの予算に国庫補助は盛り込まれておらず、輸入牛肉の違反があった場合についても、従来と異なる点はない。
91 食品安全庁を設置し、厚生労働省と農林水産省に分かれている食品リスク管理機能を一元化する。併せて食品安全委員会の機能を強化する。 未着手 1 2010年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」に食品安全庁の設置が盛り込まれたが、12年現在まで具体的な検討の動きはない。
33.郵政事業を抜本的に見直す
【政策目的】 ○現在の郵政事業には、国民生活の利便性が低下していること、地域社会で金融サービスが受けられなくなる
 可能性があること、事業を担う4社の将来的な経営の見通しが不透明であることなど、深刻な問題が山積し
 ている。郵政事業における国民の権利を保障するため、また、国民生活を確保し、地域社会を活性化するこ
 とを目的に、郵政事業の抜本的な見直しに取り組む。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
92 「日本郵政」「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」の株式売却を凍結するための法律(郵政株式売却凍結法)を可及的速やかに成立させる。 実現 2 「郵政株式売却凍結法」を第174回臨時国会で成立させ、株式売却凍結を一時試みたが、その後第180回通常国会で郵政関連会社の株式を売却することを可能とする「郵政民営化法改正法案」が成立したことにより、株式売却の凍結は断念。
93 郵政各社のサービスと経営の実態を精査し、国民不在の「郵政事業の4分社化」を見直し、郵便局のサービスを全国あまねく公平にかつ利用者本位の簡便な方法で利用できる仕組みを再構築する。
その際、郵便局における郵政三事業の一体的サービス提供を保障するとともに、株式保有を含む郵政会社のあり方を検討し、郵政事業の利便性と公益性を高める改革を行う。
実現 3 野田政権時の第180回通常国会に成立した「郵政民営化改革法案」では、郵便事業と郵便局を再統合するとともに、郵便・貯金・保険事業にユニバーサルサービスの責務を課した。また郵貯事業の株式を全て売却することによって最終的に民営化する方針に転換した。しかし、郵政各社の新規事業開拓に対して業界関係者は強く反発しているため、利便性が高まるかは不透明であり、もし利便性が高まらなければ過疎地の事業を維持出来ない可能性が生じる。
34.市民が公益を担う社会を実現する【所要額:100億円程度】
【政策目的】 ○市民が公益を担う社会を実現する。
○特定非営利活動法人をはじめとする非営利セクター(NPO セクター)の活動を支援する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
94 認定NPO法人制度を見直し、寄付税制を拡充するとともに、認定手続きの簡素化・審査期間の短縮などを行う。 実現 3 認定NPO法人制度の見直しと寄付税制の拡充は実施したが、鳩山政権下で設置された円卓会議の宣言文章を見る限り、「新しい公共」の設計に成功しておらず、強い市民社会の実現の展望を示していない。
菅政権では、認定NPO法人への寄付によって税額控除を受けられる税制改正法と認証要件を緩和する改正認定NPO法を第177回通常国会で提出・成立させた。税額控除を導入し、寄付を促す政策を講じたことは評価できるが、認定NPO法人の要件緩和は今のところ認定NPO法人の増加に寄与せず、それに加え質の低下が懸念されている。
95 国際協力においてNGOの果たす積極的な役割を評価し、連携を強化する。 実現 3 マニフェストに掲げられている「NGOと連携した途上国支援の強化」を実現するためには、NGO向けODA予算スキームの拡充が必要。2010年度より、NGOにとってODAをより利用しやすくするとの観点から、外務省のNGO向け資金協力スキームである日本NGO連携無償の制度を抜本的に見直し、それに併せて予算を大幅に拡充した。同時に、アフガニスタンに対して総額50億ドルに上る支援策の実施を表明した。しかし、アフガンへの多額の援助策をどのようにすれば日本とアフガニスタンの双方に実質的に役立つように消化しうるのか、説明が不十分である。誰にどれだけの予算がなぜ配分されるのか、援助効果の評価方法としてどのような指標が考えられているのか、不明である。加えて、これによって他のODA施策の予算が削減された点についても、なぜそれが適切な意思決定と判断しうるのか、説明されていない。このような形で拠出される援助が、日本や国際社会にどのような結果をもたらしうるのか。意思決定に至る検討プロセスに関する情報も、援助の成果に関する評価基準も不透明な以上、高い評価を与えることは困難である。
35.中小企業向けの減税を実施する【所要額:2500億円程度】
【政策目的】 ○中小企業やその経営者を支援することで、経済の基盤を強化する。
96
中小企業向けの法人税率を現在の18%から11%に引き下げる。
一部実施 2 2012年度税制改正大綱において、12年4月から3年間の措置として中小企業の軽減税率を18%から15%に引き下げることが決まったが、目標の11%への引き下げは実現できなかった。
97 いわゆる「1人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不参入措置は廃止する。 実現 3 2010年度税制改正で廃止が決定され、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の廃止を規定する所得税法の改正案が成立した。しかし、そもそも損金不算入制度は二重控除を是正するための課税であり、その課税が廃止されたことによって役員給与の二重控除問題が再燃した。
36.中小企業憲章の制定など、中小企業を総合的に支援する
【政策目的】 ○わが国経済の基盤である中小企業の活性化を図るため、政府全体で中小企業対策に全力で取り組む。
98 「次世代の人材育成」「公正な市場環境整備」「中小企業金融の円滑化」などを内容とする「中小企業憲章」を制定する。 実現 5 2010年6月、菅前首相は「中小企業憲章」を閣議決定した。その行動指針として「人材の育成・確保を支援する」、「公正な市場環境を整える」、「中小企業向けの金融を円滑化する」など8点を掲げている。
99 最低賃金引き上げを円滑に実施するため、中小企業への支援を行う。 一部実施 3 2011年度予算から最低賃金引き上げの影響が大きい業種や最低賃金が規定の額を下回る地域を対象に業務改善を支援する助成金・補助金を支給している(2011年度予算:56億円、12年度予算:41億円)。しかし、こうした支援が最低賃金引き上げにつながるかは不明である。
100 「中小企業いじめ防止法」を制定し、大企業による不当な値引きや押しつけ販売、サービスの強要など不公正な取引を禁止する。 一部実施 1 中小企業いじめを目的とする新法の制定と下請法・独占禁止法の関連部分の改正については具体的な検討が行われていない。一方で、2012年5月に下請け業者が消費税の増税分を価格に転嫁できない事態を防ぐため、独占禁止法や下請法の取り締まり強化を求める報告書はとりまとめられた。
101 貸し渋り・貸しはがし対策を講じるとともに、使い勝手の良い「特別信用保証」を復活させる。 実現 3 2010年2月に「特別信用保証」と同様に対象業種を原則全業種とした「景気対応緊急保証」を創設した。しかし、「景気対応緊急保証」は、「特別信用保証」のようにネガティブリストを活用しなかったため、審査が厳格になり、「景気対応緊急保証」の承諾比率(21.4%)が「特別信用保証」の承諾比率(33.9%)を下回った。
102 政府系金融機関の中小企業に対する融資について、個人保証を撤廃する。 一部実施 2 法務省の法制審議会で個人保証制度のあり方を検討しており、2013年2月に中間試案を取りまとめる予定である。その審議会では、経営者の個人保証の撤廃ではなく、責任制限による対処などの検討がなされている。
103 自殺の大きな要因ともなっている連帯保証人制度について、廃止を求め、あり方を検討する。 一部実施 2 法務省の法制審議会で連帯保証人制度のあり方を検討しており、2013年2月に中間試案を取りまとめる予定である。なお、2011年7月金融庁が、経営者以外の第三者による個人連帯保証等の慣行の見直しを金融機関に求める指針を発表している。
104 金融機関に対して地域への寄与度や中小企業に対する融資状況などの公開を義務付ける「地域金融円滑化法」を制定する。 一部実施 2 金融機関に対して地域への寄与度や中小企業に対する融資状況などの公開を義務付ける「地域金融円滑化法」は制定されておらず、公式な検討会が開かれた様子はない。しかし、2009年12月に成立した「中小企業金融円滑化法」によって、金融機関に貸し付け条件の変更状況を開示する義務が課され、情報開示を進める動きもある。
105 公正取引委員会の機能強化・体制充実により公正な市場環境を整備する。 実現 3 公正取引委員会は機能強化・体制充実のために審査部門と下請法運用部門の人員を増加させている(2010年度:23人増、2011年度:18人増)。しかし、この増員数では体制強化としては不十分であり、かつ罰則の強化を含めた法律の改定はまだ検討されていない。
106 中小企業の技術開発を促進する制度の導入など総合的な起業支援策を講じることによって、「100 万社起業」を目指す。 一部実施 2 野田首相が12年7月に閣議決定した「日本再生戦略」では、「100万社起業」という言葉がなくなり、目標が修正された。ただ、起業支援策として2011年度予算に、ファンドの資金援助のために日本政策金融公庫の経営基盤強化に152億円、信用保証協会の経営基盤強化に81億円を計上すると共に、SBIR段階的競争選抜技術革新支援事業に3億円を計上した。
37.月額10万円の手当つき職業訓練制度により、求職者を支援する【所要額:5000億円程度】
【政策目的】 ○雇用保険と生活保護の間に「第2のセーフティネット」を創設する。
○期間中に手当を支給することで、職業訓練を受けやすくする。
107 失業給付の切れた人、雇用保険の対象外である非正規労働者、自営業を廃業した人を対象に、職業能力訓練を受けた日数に応じて「能力開発手当」を支給する。 実現 3 2011年10月1日から、雇用保険の対象外の人に、職業訓練と就職支援、10万円の手当の支給を実施する「求職者支援制度」を施行。この制度を活用し7割が職業についているが、その半数が有期労働であり、不安定な状況から抜け出せていない。また、手当目的で同制度を利用するモラルハザードも問題視されている。
38.雇用保険を全ての労働者に適用する【所要額:3000億円程度】
【政策目的】 ○セーフティネットを強化して、国民の安心感を高める。
○雇用保険の財政基盤を強化するとともに、雇用形態の多様化に対応する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
108 全ての労働者を雇用保険の被保険者とする 実現 3 鳩山元首相は雇用保険法改正案を第174回通常国会に提出し、可決させた。その結果、雇用保険の適用範囲を「6ヶ月以上の雇用見込み」から「31日以上の雇用見込み」に変更し、非正規雇用も雇用保険の対象となった。しかし、短期労働者への雇用保険の適用は正規雇用と非正規雇用の二極化を促し、雇用の不安定化を助長する。
109 雇用保険における国庫負担を、法律の本則である1/4に戻す。 着手 2 第174回通常国会で成立した雇用保険法改正法案では、国庫負担を25%に引き上げるとしていたが、財源の確保が困難であるため実施は見送られている。
110 失業後1年の間は、在職中と同程度の保険料負担で医療保険に加入できるようにする。 実現 3 国民健康保険法施行令の改正に伴い、失業時からその翌年度末までの間に限り、前年所得の3割で保険料を算定する新制度が2010年4月から施行された。これにより、在職中と同じ水準の保険料負担で医療保険に加入することが可能となったことは評価できる。
しかし、民主党は健康保険制度の一元化を始めとした抜本的な制度改革を目指しており、その点からすると、現行制度の延長線における修正にとどまっており、保険制度全体でみると道半ばである。
39.製造現場への派遣を原則禁止するなど、派遣労働者の雇用の安定を図る
【政策目的】 ○雇用にかかわる行き過ぎた規制緩和を適正化し、労働者の生活の安定を図る。
○日本の労働力の質を高め、技術や技能の継承を容易にすることで、将来の国力を維持する。
111 原則として製造現場への派遣を禁止する(新たな専門職制度を設ける)。 着手 2 雇用期間が30日以内の短期派遣を原則禁止する改正労働者派遣法が2012年3月に成立したが、自民・公明両党との修正により、製造業への派遣を原則禁止する規定は削除された。
112 専門業務以外の派遣労働者は、常用雇用として、派遣労働者の雇用の安定を図る。 着手 2 2012年3月に成立した改正労働者派遣法では、自民・公明両党の修正により「登録型派遣の原則禁止」は削除された。
113 2ヶ月以下の雇用契約については、労働者派遣を禁止する。「日雇い派遣」「スポット派遣」も原則禁止とする。 実現 3 2012年3月に成立した改正労働者派遣法に改正労働者派遣法において、自民・公明両党との修正により、「2ヶ月以下」が「30日以下」に修正された。
114 派遣労働者と派遣先労働者の均等待遇原則を確立する。 実現 3 改正労働者派遣法に、「派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮」、「労働者派遣契約の解除の際の、派遣元及び派遣先における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化」などが明記された。しかし、この規定がどれほど均等待遇原則に貢献するかは現時点では不明である。
115 期間制限を超えて派遣労働者を受け入れている場合などに、派遣労働者が派遣先に直接雇用を通告できる「直接雇用みなし制度」を創設する。 実現 3 2012年3月に成立した改正労働者派遣法に、「直接雇用みなし制度」が盛り込まれたが、3年間施行が先送りされた。
40.最低賃金を引き上げる【所要額:2200億円程度】      
【政策目的】 ○まじめに働いている人が生計を立てられるようにし、ワーキングプアからの脱却を支援する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
116 貧困の実態調査を行い、対策を講じる。 一部実施 2 貧困の実態調査は自民党政権の時から実施されており、民主党の成果はないが、ホームレス関連予算を拡充し、NPOと協力しながら、ホームレス支援を実施している点は評価できる。また、、「ホームレス自立支援法」の改正案が、第180回通常国会おいて全会一致で可決・成立し、同法案の5年間延長も決まった。しかし、貧困の構造は変化しており、ネットカフェ難民あるいは若者ホームレスなど、こうした課題をどう対処するかの道筋は見えない。
117 ・最低賃金の原則を「労働者とその家族を支える生計費」とする。
・全ての労働者に適用される「全国最低賃金」を設定(800円を想定)する。
・景気状況に配慮しつつ、最低賃金の全国平均1000円以上を目指す。
一部実施 2 最低賃金の原則の改定と「全国最低賃金」の設定は実施されておらず、最低賃金の全校平均1000円以上も小宮山厚生労働大臣が達成困難との見解を示した。現在最低賃金引き上げのための実施されているのは下記の施策と議論である。
最低賃金について2010年6月の雇用戦略対話では、「20年までのできる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ全国平均1000円を目指す」ことを労使代表が合意した。それを踏まえて、中央最低賃金審議会は最低賃金を引き上げることを決め、最低賃金は2011年度の737円から12年の749円に増加する予定である。また、最低賃金引き上げが大きい業種や最低賃金が700円以下の地域の中小企業を対象に助成金・補助金を支給している。
118 中小企業における円滑な実施を図るための財政上・金融上の措置を実施する。 一部実施 2 民主党政権では、、2011年度は62億円、12年度は46億円の予算を計上し、中小企業の最低賃金引き上げのために、中小企業の最低賃金に関する相談窓口を設けると共にそうした企業に助成金を支給した。しかし、最低賃金引き上げは新規採用の抑制、非正規労働者の増加につながり、結果的に不安的な雇用を増やす可能性がある。
41.ワークライフバランスと均等待遇を実現する
【政策目的】 ○全ての労働者が1人ひとりの意識やニーズに応じて、やりがいのある仕事と充実した生活を
 調和させることのできる「ワークライフバランス」の実現を目指す。
119 性別、正規・非正規にかかわらず、同じ職場で同じ職場で同じ仕事をしている人は同じ賃金を得られる均等待遇を実現する。 一部実施 2 2012年3月に成立した「改正労働者派遣法」と2012年8月に成立した「改正労働契約法」によって、均等待遇に向けた取り組みはなされているが、それが非正規と正規の二重構造を解消する訳ではない。
2012年3月に成立した「改正労働者派遣法」には、同種の業務に従事する派遣社員と正社員との賃金の均衡に考慮する旨の規定が設けられた。また、2012年8月に成立した「改正労働契約法」では、有期雇用の労働者が同じ会社で5年を超えて働いた場合、本人の希望に応じて期間を限定しない雇用に転換できることになった。
120 過労死や過労自殺などを防ぎ、労働災害をなくす取り組みを強化する。 一部実施 2 労働災害対策に関しては、企業の安全活動の支援・職場のメンタルヘルス対策にそれぞれ、11年度は2.2億円・35億円、12年度は2.4億円・37億円を計上したが、これらは自民党政権から実施されてきた施策である。
42.地球温暖化対策を強力に推進する      
【政策目的】 ○国際社会と協調して地球温暖化に歯止めをかけ、次世代に良好な環境を引き継ぐ。
○CO2等排出量について、2020年までに25%減(1990年比)、2050年までに60%超減(同前)を目標とする。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
121 「ポスト京都」の温暖化ガス抑制の国際的枠組みに米国・中国・インドなど主要排出国の参加を促し、主導的な環境外交を展開する。 一部実施 1 東日本大震災後菅元首相は脱原発の方向に舵を取ったため、2020年度までに温室効果ガスを90年比で25%減少させるとした鳩山イニシアティブの達成は困難となった。また、COP17で日本は京都議定書から離脱することを決め、主導的な環境外交どころか、環境政策に関する国際社会の信頼を失いつつある。
122 キャップ&トレード方式による実効ある国内排出量取引市場を創設する。 着手 2 キャップ&トレード方式による国内排出量取引制度の導入を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案が2010年の通常国会、2012年10月の臨時国会にも提出されたが、廃案となった。
123 地球温暖化対策税の導入を検討する。その際、地方財政に配慮しつつ、特定の産業に過度の負担とならないように留意した制度設計を行う。 実現 4 全化石燃料に対してCO2排出量に応じた税率を上乗せした「地球温暖化対策のための税」が2012年度税制改正大綱に盛り込まれ、12年10月より施行された。この税は、「広く薄く」負担を求めることで、特定の産業が過度の負担を負うのを避けると同時に、急激な負担増とならないよう、施行から3年半をかけて税率を段階的に引き上げる。しかし、家計の負担は平年度で年間1,200円と少額であり、どれほど地球温暖化の防止に寄与するのかは不明瞭である。
124 家電製品等の供給・販売に際して、CO2排出に関する情報を通知するなど「CO2の見える化」を推進する。 実現 2 2010年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」では、各家庭のエネルギー利用状況等を診断した上で中立性と信頼性を確保したきめ細やかなアドバイスを行う「環境コンシェルジュ制度」の創設が明記されたが、第1 回家庭エコ診断推進基盤整備事業検討会が2012年6月に開催されて以降、遅々として進んでいない。
43.全量買い取り方式の固定価格買取制度を導入する
【政策目的】 ○国民生活に根ざした温暖化対策を推進することにより、国民の温暖化に対する意識を高める。
○エネルギー分野での新たな技術開発・産業育成をすすめ、安定した雇用を創出する。
125 全量買い取り方式の再生可能エネルギーに対する固定価格買取制度を早期に導入するとともに、効率的な電力網(スマートグリッド)の技術開発・普及を促進する。 実現 4 2011年8月、「再生可能エネルギー特別措置法」が成立し、24年7月1日から固定価格買い取り制度が施行された。年間目標の5割を、3か月間で達成した。しかし、スマートグリッドの技術開発と普及促進のための予算は計上されたが、系統安定化対策の費用が課題となっている。
126 住宅用などの太陽光パネル、環境対応車、省エネ家電などの購入を助成する。 実現 4 省エネ家電購入者を対象とした家電エコポイント、環境対応者を対象としたエコカー補助金が設けられたが、これらは民主党政権以前から実施されており、民主党政権はそれを引き継いだだけである。一方で、太陽光パネルに関しては、2011年度補正予算で太陽光発電システムの導入などを支援するために2,324億円の節電補助金が設けられた。
44.環境に優しく、質の高い住宅の普及を促進する
【政策目的】 ○住宅政策を転換して、多様化する国民の価値観にあった住宅の普及を促進する。
127 リフォームを最重点に位置づけ、バリアフリー改修、耐震補強改修、太陽光パネルや断熱材設置などの省エネルギー改修工事を支援する。 実現 3 2009年度第2次補正予算で省エネ性能が高い住宅の普及を促す「住宅版エコポイント制度」が創設され、住宅の断熱改修とバリアフリー改修などの際にポイントを発行し、支援する体制が整えられた。また、11年度の補正予算で復興支援・住宅エコポイントによるリーフォーム支援に1446億円を計上。ただ、補正予算で実施された住宅エコポイントは需要の先食いであるとの指摘もあり、政策目的の実現に資するものか否かは今後普及動向で判断する必要がある。
128 建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化等、必要な予算を地方自治体に一括交付する。 一部実施 2 建築基準法の見直しに関する検討会では、建築基準法の改正の議論をしてきたが、具体的な法案の策定には至っていない。また地方自治体への予算の一括交付の動きはみられない。なお、住宅建設の資格・許認可に関して国土交通省は2010年1月と11年3月の2回にわたり、建築確認審査の迅速化と申請図書の簡素化、厳罰化の観点から、建築基準法施行規則と関連告示等を改正する方針を示した。
129 正しく鑑定できる人(ホームインスペクター)の育成、施工現場記録の取引時の添付を推進する。 実現 3 2011年度は住宅履歴の蓄積のために、12年度はインスペクションに関する講習・研修会等のために予算を確保した。しかし、単なる講習によって優秀な鑑定人を育成できるのかは疑問である。
130 多様な賃貸住宅を整備するため、家賃補助や所得控除などの支援制度を創設する。 一部実施 2 2010年度より、住宅税制改正による「高齢者向け優良賃貸住宅供給促進税制」において、高齢者向け優良賃貸住宅を運営する事業者に対して、固定資産税の減額などの税制優遇を実施した。また、10年度から新たに「高齢者等居住安定化推進事業」に関する予算を確保し、高齢者・子育て世帯・障害者向け支援施設付き住宅の整備の促進を図っている。しかし、事業者公募制のため直接的な家賃補助や所得控除などの支援制度は創設されていない。
131 定期借家制度の普及を推進する。ノンリコース(不遡及)型ローンの普及を促進する。土地の価値のみでなされているリバースモーゲージ(住宅担保貸付)を利用しやすくする。 一部実施 2 「住替え・二地域居住の推進」、「ノンリコースローン等先導的な住宅ローンの推進」等を対象として、民間事業者の優れた事業に費用の一部を補助する「長期優良住宅等推進環境整備事業」が2010年度から導入された。しかし、11年2月末までの時限措置であり、現在補助金は打ち切られている。
一方で、リバースモーゲージに関しては、政権交代後に特別な措置を講じた様子はない。
132 木材住宅産業を「地域資源活用型産業」の柱とし、推進する。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成する。 一部実施 2 既存の支援の枠から抜け出せず、担い手の育成のための政策も効果が期待できない。
2009年度補正予算、10年度予算では、木造住宅産業の推進のために「地域材活用木造住宅振興事業」の予算を計上したが、これは自民党の実施した制度(「地域木造住宅市場活性化推進事業」)の名称を変更しただけである。なお、人材育成に関しても予算を計上しているが、その支出先のほとんどが一般社団法人であり、産業を担う人材育成は期待できない。
45.環境分野などの技術革新で世界をリードする
【政策目的】 ○1次エネルギーの総供給量に占める再生可能エネルギーの割合を、2020年までに10%程度の水準まで引き上げる。
○環境技術の研究開発・実用化を進めることで、わが国の国際競争力を維持・向上させる。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
133 世界をリードする燃料電池、超伝導、バイオマスなどの環境技術の研究開発・実用化を進める。
新エネルギー・省エネルギー技術を活用し、イノベーション等による新産業を育成する。
実現 2 環境・エネルギー関連の研究開発と実用化のために、予算が計上されているが、イノベーション等による新産業の創出までの道のりは全く見えない。下記は現在実施されている施策である。
2012年度、研究開発関連では、燃料電池とイットリウム系超電導電力機器、バイオマスの研究開発に対して、実用化関連では、民生用燃料電池の導入支援と石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業、高温超電導ケーブル実証プロジェクト等に対して予算を計上した。なお、2012年度予算において、再生可能エネルギー・省エネルギー等の導入支援・最先端の技術開発に2627億円(11年度は3026億円、11年度3次補正予算は2419億円)を計上した。
134 国立大学法人など公的研究開発法人制度の改善、研究者奨励金制度の創設などにより、大学や研究機関の教育力・研究力を世界トップレベルまで引き上げる。 一部実施 2 公的研究開発法人制度の改善も「研究者奨励金制度」の創設もあまり検討されていない。前者では、2010年4月の公的研究開発法人制度に関する検討会において、研究開発等の特性を考慮したグローバルな運営を行う「国立研究開発法人」制度を創設するという報告があっただけである。
46.エネルギーの安定供給体制を確立する
【政策目的】 ○国民生活の安定、経済の安定成長のため、エネルギー安定供給体制を確立する。
135 エネルギーの安定確保、新エネルギーの開発・普及、省エネルギー推進等に一元的に取り組む。 一部実施 2 2011年度第3次補正予算および12年度予算では、エネルギーの安定確保と新エネの開発・普及、省エネの推進に一元的に取り組むために予算を確保したが、12年5月に稼働していた原発がゼロとなり(今は大飯原発3、4号機のみ稼働)、現在も夏季と冬季のエネルギー供給不安が懸念されている。
136 レアメタル(希少金属)などの安定確保に向けた体制を確立し、再利用システムの構築や資源国との外交を進める。 一部実施 2 レアメタルの安定確保に向けた取り組みはなされているが、レアメタルの多くが中国に埋蔵されており、全てを他の国で代替するのは不可能である。下記に現状の取り組みを記載した。
2010年度予算案では、合計1012億円をレアメタル対策として計上した。他方で、中国からの輸入がストップした際に、政府は豪州やベトナムと共同開発に合意するとともに、カリフォルニア州の共同開発も視野に「脱中国」で米国と連携することで合意した。
なお、野田政権では、レアメタル等を使用済み小型電子機器等から回収するための「使用済み小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律」を第180国会に提出・可決した。その結果、レアメタルを回収する仕組みは整ったが、回収する技術が未だ未熟である。
レアメタル(希少金属)などの安定確保に向けた体制を確立し、再利用システムの構築や資源国との外交を進める。 実現
137 安全を第一として、国民の理解と信頼を得ながら、原子力利用について着実に取り組む。 未着手 1 福島第一・第二原子力発電事故の後、野田首相は原子力利用の全面的に見直しに入り、12年9月に公表した「革新的エネルギー・環境戦略」では、2030年に原発稼働ゼロを目指すとしたが、それを可能とする具体的な道筋は示されていない。
47.消費者の権利を守り、安全を確保する【所要額:400億円程度】
【政策目的】 ○日常生活にあるリスクから国民を守る。
○消費者の立場に立った行政を確立する。
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
138 消費者に危害を及ぼすおそれのある製品・物品等に関する情報の公開を企業に義務づける「危険情報公表法」を制定する。 一部実施 1 2012年現在、同法制定に向けた具体的な動きはない。
139 消費者行政を強化するため、地方消費生活相談員及び国民生活センターの相談員の待遇を抜本的に改善する。 一部実施 2 2010年7月に開催された地方消費者行政推進本部の会議では、これまで相談員の新規配置・増員など「量的な拡大」にのみ活用可能であった地方消費者行政活性化基金を、「既存の相談員の待遇改善」にも活用可能にすることで一致したが、まだ具体的な措置はとられていない。
140 消費生活相談の過半を占める財産被害の救済と消費者団体訴訟制度を実効あるものとするため、悪徳業者が違法に集めた財産をはく奪する制度を創設する。 着手 2 悪徳業者の財産のはく奪に関しては、これまで消費者庁の集団的消費者被害救済制度研究会で検討されてきたが、2011年8月に同研究会は、現行制度の活用および勧告・命令等の行政措置が適当という判断を下した報告書を公表。
48.災害や犯罪から国民を守る【所要額:500億円程度】
【政策目的】 ○災害や犯罪から国民を守る。
141 大規模災害時等の被災者の迅速救済・被害拡大防止・都市機能維持のために、危機管理庁(仮称)を設置するなど危機管理体制を強化する。 着手 1 野田首相は2012年3月1日の衆議院予算委員会で「東日本大震災の教訓を踏まえ、危機管理庁の話も含め危機管理体制の充実、強化に努める」と答弁したが、危機管理庁設置の具体的な議論には至っていない。
142 日常生活に密着した「地域・刑事・生活安全」にかかる警察機能を拡充する。 実現 2 2011年度と12年度の予算では、警察官を増員し、街頭防犯カメラの設置と窃盗の抑止対策に予算を計上したが、日常生活の安心安全を守るためには警察の増員だけでは不十分であり、地域住民との連携を模索し、新たな犯罪の抑止方法を検討する必要がある。
49.取り調べの可視化で冤罪を防止する【所要額:90億円程度】
【政策目的】  
143 ビデオ録画等により取り調べ過程を可視化する。 一部実施 2 11年3月〜12年4月の間、特別刑事部の独自捜査事件の取り調べを試験的に可視化する取り組みがなされたが、未だ法制化に至っていない。また警察の捜査事件における取り調べの可視化について、2012年4月1日より取り調べの録音・録画(可視化)の試行の範囲を拡大し、12年7月まで4月以降、1051事件で1435回実施していおり、警察においての可視化は一定程度進んでいる。
50.人権侵害救済機関を創設し、人権条約選択議定書を批准する
【政策目的】 ○人権が尊重される社会をめざし、人権侵害からの迅速かつ実効性ある救済を図る。
144 内閣府の外局として人権侵害救済機関を創設する。 着手 2 政府は12年5月、法務省の外局として、人権侵害事案で調査や勧告、刑事告発ができる「人権委員会」を新設する人権救済機関設置法案を閣議決定したが、野党からの反対もあり成立の見通しは立っていない。
145 個人が国際機関に対して直接に人権侵害の救済を求める個人通報制度を定めている関係条約の選択議定書を批准する。 着手 1 2011年6月の民主党外務部門会議で個人通報制度の導入について意見交換がなされたが、民主党は11年8月、その導入を先送りする方針を決めた。
51.緊密で対等な日米関係を築く      
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
146 日米外交の基盤として緊密で対等な日米同盟関係をつくるため、主体的な外交戦略を構築した上で、米国と役割を分担しながら日本の責任を積極的に果たす。 表記なし 1 「緊密で対等な日米同盟」の定義がいまだ明確に語られていない。政府が望ましい日米同盟としてどのような姿を描いているのかが具体的に見えない。また、「主体的な外交戦略の構築」の作業についても、有識者委員会の立ち上げや外交戦略文書の発表など、これに向けて政府が動いた形跡は確認できない。一方で、普天間基地移設問題をめぐる混乱のために、日米間の信頼関係が首脳レベルで失われた。その後、菅、野田政権で関係の再構築に向けて動いているが、マニフェストで掲げられたような、日本が積極的に役割を果たすということからはほど遠いのが現状である。
147 米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、貿易・投資の自由化を進める。その際、食の安全・安定供給、自給率向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。 表記なし 2 日米2国間でのFTA交渉は進んでおらず、また米国など9カ国が参加するTPP交渉に関しても関係国との協議開始は閣議決定をしたが、2012年中に交渉会合に参加するための与党内の合意形成は出来なかった。
148 日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む。 表記なし 2 普天間基地移設問題と日米地位協定に関して、前者は自民党政権の考えを踏襲し、後者は改定ではなく、運用改善に止まっている。

普天間基地移設問題

鳩山元首相は、「海外移転が望ましいが、最低でも県外移設が期待される」と述べたが、結局は旧政権で検討されてきた辺野古への移設案に戻った。鳩山元首相のこの行動が米国からの信頼を損ね、日米関係は悪化した。最終的には、2012年4月の日米2+2合意において、普天間飛行場を辺野古に移設する現在の計画が、引き続き、唯一の有効な解決策である旨を確認したが、沖縄県民の同意は得られていない。

日米地位協定
玄葉外務大臣は、2011年11月に沖縄県で開いた記者会見で、日米地位協定の改定について「問題意識としては持っているが、具体的に一つずつ解決した方が早いのも事実だ」と述べ、当面は運用改善で対応せざるを得ないとの認識を示した。また、2012年10月に発生した米兵による強姦事件を受け、沖縄県の仲井真知事は政府に地位協定の見直しを訴えたが、防衛相は「現時点で地位協定を改定する考え方は政府内にはない」と発言するなど、米地位協定の改定について米側に提起された形跡はこれまでの時点では確認できなかった
52.東アジア共同体の構築をめざし、アジア外交を強化する  
149 中国、韓国をはじめ、アジア諸国との信頼関係の構築に全力を挙げる。 表記なし 1 鳩山元首相の東アジア共同体構想は消え、日韓間と日中間の領土問題によって信頼関係は壊れてしまった。また、その後、信頼関係の構築に向けた具体的な動きは見えてこない。

日中関係
野田首相が2011年12月の訪中時に「日中『戦略的互恵関係』の一層の深化に向けた6つのイニシアチブ」を提案し、日中の関係改善を前進させた。しかし、12年9月の日本政府による尖閣諸島の購入後、日中の両国国民のナショナリズムが高まり、日中の友好事業が中止・延期となる等、両国関係は深刻な状況にある。

日韓関係

日韓関係については、11年10月の首脳会談で2国間EPAの交渉再開に必要な実務者協議を開始することで合意するなど緊密な首脳間の交流が続いてきたが、12年8月の李明博大統領の竹島上陸に対して玄葉外相が国際司法裁判所に提訴する意向を表明し、両国関係が悪化した。

RCEP
12年11月にカンボジアで開かれたASEAN関連首脳会議では、東アジア包括的経済連携(RCEP)交渉立上げ式が開催され、ASEAN諸国及び日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドによりRCEP交渉の立上げが宣言された。そこでは、貿易と投資、経済・技術協力、知的財産、競争、紛争解決などを議論し、15年までに末までに交渉完了を目指すとされた。
150 通商、金融、エネルギー、環境、災害、救援、感染症対策等の分野において、アジア・太平洋地域の域内協力体制を確立する。 表記なし 2 2010年APEC首脳会議で採択された「横浜ビジョン」では、アジア太平洋自由貿易圏の構築に向け具体的な行動をとることを合意すると同時に、初めての長期的かつ包括的な成長戦略を策定した。また、2012年APEC首脳会議では、環境物品リストの関税削減、2015年までのスタンドスティルの延長、食料の輸出規制を始めとする新たな貿易・投資への障壁を設けないこと等を確認した。しかし、アジア・太平洋地域の域内協力体制の確立の見通しはまだ立っていない。
151 アジア・太平洋諸国をはじめとして、世界の国々との投資・労働や知的財産など広い分野を含む経済連携協定(EPA)、自由貿易協定(FTA)の交渉を積極的に推進する。その際、食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。   2 政権交代後の2国間でのEPA・FTA交渉では、09年9月からスイス、ベトナム、インド、ペルーとのEPAが発効した。しかし、国内の農業に配慮し、完全自由化を目指すTPPへの交渉参加は決断できないでいる。農業保護と貿易自由化のトレードオフに直面している。
53.北朝鮮の核保有を認めない
152 北朝鮮が繰り返す核実験とミサイル発射は、わが国および国際の平和と安定に対する明白な脅威であり、断じて容認できない。 表記なし 1 本項目については、あくまでも「容認できない」という姿勢を述べただけであり、約束ではない。
ただし、核兵器・弾道ミサイルについては、2012年4月の北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射を非難する国連安全保障理事会の議長声明採択を受け、日本は安保理の制裁委員会に対して、北朝鮮の企業や組織26団体を資産凍結の対象に加える追加制裁措置を求めるなどの対応は取っている。
153 核・化学・生物兵器やミサイルの開発・保有・配備を放棄させるため、米韓中ロなどの国際社会と協力しながら、貨物検査の実施を含め断固とした措置をとる。 表記なし 2 政権後の2010年5月に、北朝鮮に出入りする船舶などの貨物を検査するための貨物検査特別措置法案が成立した。しかし、前政権の09年6月に国連安保理の全加盟国が北朝鮮に対する武器の輸出入を禁止し、北朝鮮に関する貨物検査を実施する安保理決議がすでに採択されていた。
154 拉致問題はわが国に対する主権侵害かつ重大な人権侵害であり、国の責任において解決に全力を尽くす。 表記なし 1 拉致問題解決の見通しは全く立っていない。
また、「国の責任において解決に全力を尽くす」と約束した拉致問題については、6者協議の再開に向けて動いてはいるものの韓国・中国との関係が悪化しており機能しておらず、また、政府は2012年8月に日朝2国間協議を4年ぶりに実施し、その後11月に日朝政府間協議を実施したが具体的な進展はなかった。なお、2012年9月、北朝鮮の朝鮮通信が、拉致問題について「すでに全て解決した」との見解を示し、日本側に対し、「『核・ミサイル、拉致問題』にしがみ続ければ、関係改善はない」と主張した。
54.世界の平和と繁栄を実現する
<言論NPO評価基準>  1:未着手  2:実現が困難、断念  3:実現は不十分、修正   4:実現に向かって動いている  5:実現 
155 国連を重視した世界平和の構築を目指し、国連改革を主導するなど、重要な役割を果たす。 表記なし 1 2010年9月から安保理改革G4(日本、ブラジル、ドイツ、インド)外相会合が開かれたものの、国連改革については、改革主導に向けた日本の政治的リーダーシップの存在を確認できなかった。国際的にもそのようなモメンタムの存在は確認できなかった。
156 我が国の主体的判断と民主的統制の下、国連のPKO等に参加して平和の構築に向けた役割を果たす。 表記なし 2 2010年1月にハイチで発生した大地震においては、政治主導の体制の下、鳩山前政権として初めての自衛隊派遣を行い、国連ハイチ安定化ミッション(MINSTAH)に部隊が参加している。グローバル・アジェンダについては、開発途上国に対する様々な能力増強支援や、G8/20、国連等を通じた多国間協力、または2国間協力など、実務レベルの取り組みが継続されてきており、この点についてはプラスに評価できる
157 海上輸送の安全確保と国際貢献のため、適正な手続きで海賊対処のための活動を実施する 表記なし 2 自民党政権時代の2009年に制定された海賊対処法に基づき、ソマリア沖で海上自衛隊による海賊対策の活動が展開されてきた。また、12年7月11日民主党政権では、同月23日で期限が切れるソマリア沖での海賊対処行動を1年間延長する方針を固めた。しかし、外国艦船等へ燃料給油と軍隊・武装警備員の乗船が不可能など、現行制度のままでの活動は制限されている。
158 紛争解決制度の充実等や農業を含む政策の根本的見直しにより、世界貿易機関(WTO)交渉妥結に向けて指導力を発揮するなど、貿易・投資の自由化を促進する。 表記なし 1 2011年4月、WTOドーハ・ラウンド交渉の議長報告書等の文書が発出されたところ、加盟国の立場の違いが未だに大きく、交渉は危機的な状況にあり、ほとんど展望が見えていない。また、このこう着状態の打開に向けて、日本政府が指導力を発揮したとは評価できない。
55.核兵器根絶の先頭に立ち、テロの脅威を除去する
159 北東アジア地域の非核化をめざす 表記なし 1 北朝鮮の非核化のために有効な手段を講じられていない。
160 包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効やカットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の早期実現に取り組む。 表記なし 1 日本政府は、2011年に豪州政府と共同でカットオフ条約(FMCT)に関する専門家会合を開催し、また11年9月の第7回CTBT発効促進会議に出席し、CTBTの批准を呼び掛けたが、その発行の見通しは立っていない。
161 2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議において主導的な役割を果たす。 表記なし 1 2010年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、日本の提出した日豪共同提案(核軍縮・不拡散)、IAEA保障措置の強化、技術協力、軍縮・不拡散教育の4本の作業文書は最終文書に反映された。しかし、12年12月に開催を予定していた中東非核地帯構想に関する国際会議は延期された。これら一連の状況について、日本が主導的に役割を果たしたとは言えない
162 テロとその温床を除去するため、NGOとも連携しつつ、経済的支援、統治機構の強化、人道復興支援活動等の実施を検討し、「貧困の根絶」と「国家の再建」に役割を果たす。 表記なし 1 2011年度予算で、「元気な日本復活特別枠」事業として、無償資金協力や技術協力などNGOとの連携に106億円が、ミレニアム開発目標の達成に向け、UNDPコア・ファンドなど9の国際機関への任意拠出金として前年度比53%増の331億円が計上された。しかし、これが「貧困の根絶」「国家の再建」にどのような役割を果たすか不透明で、評価できない。
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