2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(民主党・農業)

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■形式要件についての評価(18点/40点)  

農林水産業を成長戦略の一環と位置付け、「農業で働く人を増やす、地域を支える農林水産業を守り、育てる」ことを理念とし、そのためには6次産業化によって「農林水産物の付加価値を高め、農業者などの所得の向上を図る」ことを目標としている。そして、具体的に「2015年度までに3兆円産業にする」ことを掲げている。しかし、財源についての言及はない。政策手段としては、農林漁業成長産業化支援機構法にもとづく地域ファンドからの6次産業化に取り組む事業者への出資や経営支援推進、「人・農地プラン」にもとづく新規就農者への給付金の給付や、地域の中心となる事業者への農地集積、戸別所得補償制度の法制化などを提示している。

 

 

■実質要件についての評価(18点/30点)

 今回、農林水産業が、マニフェストの「新しい競争力は、人と地域」という項目に入っていることからも、明確に競争力重視の路線に入ったと判断できる。「人・農地プラン」によって「新規就農者への給付金の給付、地域の中心となる事業者への農地集積を行う」というところからも、強い担い手の育成を課題として認識していると思われる。ただし、後述するようにこれはすでに実行段階の政策であり、新しい約束というわけではない。
 その一方で、戸別所得補償制度は小規模兼業農家までやるのか、それとも一定規模以上の担い手に絞るのかなど制度設計は示されていない。競争力を重視していくのであれば、当然後者ということになるはずだが、単に「法律に基づく安定した制度」にすることしか述べられていない。そもそも、この制度の位置付けや、この制度によって農業をどう変えていくのかも示されていない。
 全体的に見ると、戸別所得補償制度や「人・農地プラン」など、既に実行段階の政策のいくつかについて、その推進を謳っているだけで、体系性や新味がない。したがって、有権者に判断の材料を提供するマニフェストにはなっていない。

 そもそも、民主党政権下の農政最大の問題は、鳩山政権下の小規模経営・兼業農家重視型のスタンスと菅・野田政権下の競争力強化路線の間で揺れ動く方針である。これをどのように自己評価しているか、それに従って今後の民主党がどのような農政理念を掲げるかを丁寧に説明すべきであるが、なされていない。政治主導を標榜する農政のもとで、政策の体系性や継続性に配慮を欠いた制度設計が行われる中で、地域の現場の戸惑いや負担が増大している。既存の政策の推進を謳うだけの今回の平板なマニフェストからは、こういった点についての感度や配慮は感じられない。

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