2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(日本維新の会・教育)

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■形式要件についての評価(3.5点/40点)  

初等・中等教育
 教育政策についての理念・目的は、不明瞭である。「経済・財政を賢く強くする」「国家のシステムを賢く強くする」といった理念は明確であるが、これらに資する教育政策として目的が明確なのは、保育の成長産業化に限られる。
 個別政策についても、明確な目標を含むのは保育の成長産業化のみである。保育バウチャー制度の導入、新規参入規制の撤廃、ワークライフバランスの3つが政策例として挙げられている。一方、教育制度改革は「教育委員会制度の廃止を含む」との曖昧な表現にとどまり、また教育改革については、内容がまったく示されていない。
 達成時期については、いずれの個別政策とも記載がない。
 財源の裏付けについては、いずれの個別政策とも記載がない。
 目標実現のための工程・政策手段について、全体としての実行スケジュールや責任体制に関する記述はない。ただし、子育て支援の需要に対して、保育の成長産業化によって対応しようとする姿勢は、厳しい財政状況を踏まえての政策案として評価できる。

高等教育
 日本維新の会の「骨太2013-2016」には、教育制度改革(教育委員会制度の廃止を含む)と、「やる木のある高齢者が行政組織で働けるように人材育成→教育改革」と記されているのみである。これでは、政策としてはきわめて不十分な説明である。
 各論とされる「維新八策」には、理念として、「自立する個人を育む、基礎学力を底上げしグローバル人材を育成」と記されている。基本方針で、高等教育に関する記述は、「国立大学長の権限拡大・強化、大学マネジメントの確立」、「世界標準の英語教育と海外留学支援、最先端を行くICT教育環境」「大学入試改革を通じた教育改革」「高度人材養成機関としての大学院の質向上と選抜制強化」と記されていた。
 殆どの公約が、体言止めで記されているので、目的を示す文章としてはきわめて不十分である。たとえば、ICT教育環境を整えるのか、誰を対象にしているのか、どのようなICT教育環境なのかわからない。

また、達成時期や工程などは一切記されていない。

 

 

■実質要件についての評価(5.5点/30点)

初等・中等教育
 マニフェストの体系性、課題抽出の妥当性について、まず、現代日本が抱える子育て支援の課題に取り組む姿勢が、保育の成長産業化の課題抽出に見出される。この課題は、「経済・財政を賢く強くする」との上位理念と照らしても、妥当なものであろう。他方、教育改革(人材の育成・開発)は、経済・財政の強化にとって欠かせない課題ではあるもの、その内実が記されていないために、妥当性を評価することが難しい。維新八策に提示された基礎学力の底上げ、グローバル人材の育成といった具体的課題と、この「骨太2013-2016」に示す教育改革との関係が見えない。また、教育委員会制度の廃止を含む教育制度改革は、どのように国家システムを賢く強くするのか、上位理念との整合性を読み取ることは難しい。
 課題解決の妥当性について、保育の成長産業化に挙げられたバウチャー制度の導入、新規参入規制の撤廃、規制緩和は、上位理念である経済・財政の強化と照らし合わせれば体系性はある。一方、人材開発に資する教育改革については、その具体的な内容が示されていないため、解決の妥当性を評価することができない。教育委員会制度の廃止を含む教育制度改革についても、具体案が示されていないため、同様に評価が困難である。ここでもまた、維新八策に提示された「教育バウチャー制度の導入」や「教育行政制度の自治体の選択性」といった具体策との関連が示されていない。
 政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任に関する施策としては、教育委員会制度の廃止を含む教育制度改革が該当するが、改革の内容が不明確であるため評価できない。以上より、1点とした。

高等教育
 評価の視点に示されたビジョンは記されていない。日本維新の会が自ら、理念として掲げている「自立する個人を育てる」ことと、その下位概念として記されている基本理念(初等・中等教育も含む)との間に体系性がない。なぜならば、基本方針に記されているのは、教育行政や教員制度に関するもののみであり、自立する個人をどのように育むのかという点について説明が全くなされていないからである。
 また、課題認識という点でも問題がある。国立大学長の権限は、既に、国立大学法人化に伴い制度上は大幅に増えている。制度上権限が拡大しても、実際には活用されない現状をどこまで把握しているのか。また、こうした状況の背景には、学内政治や運営の問題があるが、政府が大学運営の中身にまで干渉しうるのかという思慮がない。すなわち、これは、大学の自治にかかる問題であり、慎重に議論する必要がある。また、海外留学支援とICT教育環境が併記されているがよくわからない(そもそも、大学を対象としているのか、初等・中等を対象にしているのか、それともすべてを対象としているのかも不明である。)
 また、大学入試改革を通じた教育改革とあるが、入試制度のみで、教育改革を実現することは不可能である。そもそも、教育改革とあるが、高等教育の何を改革するのかが示されていない。仮に、入試改革で教育改革が可能であると考えるのならば、具体的にどのような方法や工程でそれを実現するのか示す必要があるが、そのような説明はなされていない。
高度人材養成機関としての大学院の質向上と選抜制強化とあるが、これも何をさしているのかわからない。大学院の質向上とは、教育面をさしているのか、研究面をさしているのか。

 以上、課題認識の仕方が不充分な中で、課題解決策も短絡的な内容になっているといわざるをえなかった。また、政策を実現するための知識、能力が不足していると判断した。

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