初等・中等教育
「安心、そして質の高い教育」への改革は、いじめや暴力問題の解決を目指す政策としては、明確な理念である。ただし、「質」あるいは「教育のための社会」が何を指すかは明らかではない。
個別政策については、それぞれ明確な目標が設定されている。まず、安心・安全を基本とする学校教育改革に向けた施策として、いじめ対策、不登校対策、通学路の安全対策、学校の耐震化と長寿命化、安全教育の教科化について、それぞれ目的と解決策が簡明に記述されている。教育費負担の軽減についても、幼児教育の無償化、奨学金制度の拡充、全中学校への給食導入と、課題がわかりやすい。質の高い教育の推進については、全体としての目標は曖昧であるものの、特別支援教育における「デイジー教科書」の提示、留学支援における高校生留学支援金等の対処枠の拡大、公立夜間中学校の全都道府県設置など、個別の施策は非常に具体的で評価できる。ただし、教育行政の見直しについては、教育委員会の機能強化、学校裁量の拡大、教員の創意工夫の奨励を目的に挙げているものの、その具体的な内容が不明である。
達成時期については、いずれの個別政策とも記載がない。
財源の裏付けについては、いずれの個別政策とも記載がない。
目標実現のための工程・政策手段について、全体としての実行スケジュールや責任体制に関する記述はない。ただし、個別政策のレベルでは、いじめ対策、不登校対策について、「学校支援地域本部」及び「教育支援センター」の設置、小中学校へのカウンセラー及び児童支援専任教諭の常時配置を示すなど、対策の担い手が明記されている点が評価できる。また、学校施設の耐震化についても、劣化状況調査に基づいた長寿化施策による維持費圧縮が、具体的な提案として提示されている。
高等教育
公明党は、「安心、そして質の高い教育改革」を掲げているが、主としてその対象は、初等・中等教育の子供をさしているようにみえる。高等教育について、先の評価の第1の視点にかかるような、教育水準にかかる人口構造比のようなビジョンは示されていない。公明党のマニフェストから読み取れるのは、大学教育の質の向上である。
個別政策の目的としては、給付型奨学金制度の創設、無利子奨学金や変換免除制度などの奨学金制度の拡充、秋入学の推進、障害者の大学進学推進を掲げている。ま
た、大学教育の質の向上を、授業評価を通じてはかるとある。
国際化については、高校生や大学生の海外留学を促進するために、給付型の留学金制度の拡充をあげている。また、外国人在日留学生については、就職支援や生活支援を充実させるとある。
さらに、低所得者はや弱者を対象にした対応策として、通信教育課程を導入した大学の増設を挙げている。
公明党の教育政策は、弱者への対応に重きが置かれている。他方で、高等教育全般にかかるビジョンの提示は不十分である。また、個別政策にかかる目的は示されているが、達成時期や財源は示されていない。工程や政策手段については、奨学金などの給付に型より、その他については手段が十分に示されていない。 |