初等・中等教育
理念・目的は明確である。ただし、教育の質の向上については、目的が曖昧で具体性に欠ける。
個別政策では、「社会全体で子どもの育ちを支援する」施策について、新児童手当の給付、保育所定員の増員、放課後児童クラブの整備、幼保連携型認定こども園や小規模保育への給付制度の実施、「子ども家庭省」の設置など、明確な目標が設定されている。特に、3歳未満児の保育所利用者の増加、放課後児童クラブの定員増については、具体的な数値目標が設定されており、高く評価できる。また「子どもたちの命を守り、教育の質を高める」施策では、いじめ防止措置の法制化、通学路の安全点検、学校施設の耐震化、コミュニティスクール(土曜学校含む)の増加、教師の研修充実と修士比率の引き上げ、教職員増と少人数学級の推進について、目標が明確である。しかし、いじめ防止措置と不登校対策が混在している点、子どもの虐待防止策が「社会全体で取り組む」との記述にとどまる点、地方教育行政・教育委員会制度について「見直す」以上の説明がない点は、明瞭さに欠けている。
達成時期について、3歳未満児の保育所利用者の増加、放課後児童クラブの定員増、「子ども家庭省」の設置検討の3つの施策に記述がある。
財源について、消費税をすべて社会保障に充てるとの方針が示されている。しかし、子育て支援、医療・介護、年金の各政策への配分割合は不明である。実際に子育て支援の個別施策に十分な財源が確保されるか否かについて、疑問が残る。
目標実現のための工程・政策手段について、全体としての実行スケジュールや責任体制に関する記述はない。ただし、「社会全体で子どもの育ちを支援する」施策では、責任主体としての「子ども家庭省」の設置検討、及び3歳未満児の保育所利用者の増加、放課後児童クラブの定員増が、具体的な数値目標及び達成時期とともに記述されている。責任体制の検討と具体的なスケジュールの記載を評価した。
高等教育
教育全般に係る理念は示されておらず、「共に生きる社会」という理念の下に、「子供たちの命を守り、教育の質を高める」という目標が設定され、高等教育機関に係る目標は「新しい競争力は、人と地域」という理念の下に「世界のトップレベルの研究開発の成果を社会に還元する」という内容で示されている。しかし、いずれの項目についても、教育とは直接関連しておらず、何が課題であるかも不明瞭である。
個別政策については、国立大学などの耐震化の完了、授業料減免や奨学金の拡充、コミュニティスクール(土曜学校含む)の増大、大学等の理系カリキュラム改善やインターンシップを産学官連携での推進、テニュアトラック制の普及等による優秀な若手研究者の支援、研究の中核となる大学の研究力の強化、世界で戦えるリサーチユニバーシティ(研究大学)の増強など、限定的な内容となっている。さらに、これらの目標または項目の関連性は薄く、それぞれをどのようにすれば達成できるのかについての記載はない。
達成時期、財源の裏付け、達成時期については記載がない。
目標実現のための工程・政策手段については、「教育」に係る項目がその他の項目の下位概念となっていることとも関連し、どのようなスケジュールや政策を組みわせて展開していくのかの記載がない。 |