2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(自民党・市民社会)

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■形式要件についての評価(14点/40点)  

 理念として読み取ることができるのは、愛国心ある国民とそれをパターナリスティックに統治する国家という関係図である。しかし、この理念が妥当であるか否かについては多いに疑問が残る。
 先の国家像のもと、市民社会に関連する具体的な項目(政策)を読み取ることができる。公約61「わが国を愛する心と規範意識を兼ね備えた教育」では、国旗・国家を尊重し、規範意識の高い教育を行うこと、中学・高校ではボランティア活動やインターンシップを必修化し、公共心や社会性を滋養すると、具体的な説明がなされている。公約319「国民本位の政治の実現」では、地域の人々の意見を聴き、自民党支部の運営に反映すると記されている。実施時期や工程は描かれてはいないが、比較的明確で具体的な目的が示されている。
 他方、公約162、316は、貧困問題や環境問題においてNPOを活用するということに留まっており、目的もさほど曖昧ではない。また、公約49では、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスを進化させて雇用創出を実現するとあり、その担い手のひとつとしてNPOなどが含まれている。
 比較的明確で、すぐに着手可能と思われる施策に、公約312の公益法人制度の問題がある。新公益法人制度への移行をスムーズに進めるという点では、期限あと1年であり、到達点がみえる。なお、公益法人への行政委託は中止し、国と独立行政法人に移すと記しているので、公益法人制度改革は、行政改革の一環として捉えられている。その妥当性については、実質要件の項で述べたい。
 なお、達成時期の明示、実施工程や予算措置については示された公約がなかった。

 

 

■実質要件についての評価(10点/30点)

 前述のように、理念として掲げられているのは、パターナリスティックな国家像である。確かに、ボランティアやインターンの促進が掲げられているが、愛国心や規範心をもってもらうためのもので、強い市民社会を築くための施策ではない。
 国民本位という言葉は述べられているが、地域の人々の声を自民党支部運営に反映するというのであれば、それは国民本位とはいえないだろう。
 また、公約41のように、雇用創出の手段としてのみNPOやソーシャルビジネスを捉えると、結果的に補助金依存型の組織を作ってしまうことは、この10年のソーシャルビジネス支援施策の結果が物語っている。NPOを支えるためにフルタイムの人材を確保することは大事だが、その活動の多くが、営利性が低く、収益金に加え、寄付やボランティアなどの無償の支援との組み合わせによって維持されている。これを雇用目的にした途端に、ボランティアなど、一般の人々の参加を絶ってしまうところがある。結果、補助金に依存せざるをえなくなっている。したがって、このような実態や検証の上に掲げられた政策とは思えない。
 若干意味は異なるが、介護や貧困などの政策実行手段として単純にNPOを活用しようとすると、行政の下請け化を招く可能性が強くなる(公約162,216)。
 また、2009年まで、NPOや非営利組織の基盤強化が公約に記されていたが、2012年版にはなくなっている。また、公約312では、公益法人への行政委託を中止し、国や独立行政法人に移すと述べている。しかし、公益法人制度は旧自民党政権下で、改正がなされ、新制度の第1条(法の目的)には、「民間が担う公の増進」と記されている。しかし、現民主党にとって、行革の視点が強く、自ら作成した制度の意味が忘れされているのではないかとさえ思えた。
 以上から、市民社会にかかる課題の抽出も適当ではなく、政策が課題に適応していない。

他方、リーダーシップや実施体制については、与党時代の経験があること、また党としてのガバナンスは比較的整っている点は評価できる。

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