2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(自民党・原発・エネルギー)

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■形式要件についての評価(16点/40点)  

 エネルギー政策全般について、原子力に依存しなくても良い経済、社会構造を確立し、国民生活や経済活動に支障がないよう、エネルギー需給の安定に万全を期するというビジョンを掲げ、①全てのエネルギーの可能性を徹底的に掘り起し、社会・経済活動を維持するための電力を確実に確保すること、②固定価格買い取り制度の拡充、風力・小水力発電の開発・普及、公共施設や住宅への太陽光パネルの設置促進、地熱発電所の建設促進など再生可能エネルギーの最大限の導入、省エネの推進を3年間優先して取り組むとされており、目標と達成時期が明確にされていて評価できる。ただ、しかし、これらを進めていくうえでの財源は明示されておらず、目標実現に向けた工程や政策手段は明らかではなく減点ポイントである。また、「原子力に依存しなくても良い」というビジョンの表記が説明不足であり、どこまで原子力に「依存しない」のか、という具体的な数字を含んだ提言ができなかった点も減点ポイントである。
 原発政策について、再稼働の可否については順次判断し、全ての原発について3年以内の結論を目指すという目標と達成時期を明記した。その実現のための工程、政策手段として、再稼働の可否についての安全性は原子力規制委員会の専門的判断に任せる旨を明示した。同時に、原子力政策に関して、権限、人事、予算面で独立した規制委員会による専門的判断をいかなる事情よりも優先することも併せて記載し、原発の安全性を第一に据えることを明示したことは評価できる。しかし、党として安全性を判断する基準や規律、また、最終的な判断は誰が行うのか、不明確である。
 地球温暖化対策について、ポスト京都議定書の国際枠組みづくりを主導し、2050年までに温室効果ガス排出量を2005年比80%削減することを堅持する旨を目標に掲げた。しかし、その目標に対しての具体的な達成時期、目標実現に向けた工程や政策手段はあいまいで実現するかは不透明である。また、民主党政権が国際公約として掲げた1990年比25%削減、自民党が2020年までの中期目標として掲げた2005年比15%削減 についても、あいまいにして結論を先送りにした。

 

 

■実質要件についての評価(19点/30点)

 形式要件で見たそれぞれの公約であるが、現実問題として原子力リスクを多くの国民が感じており、中長期的には脱原子力依存は避けるのは難しい。一方で、原子力ゼロを前提として、その際に起こりうるエネルギー価格の上昇や経済(競争力)、対米関係も含めた国際的役割への影響がどうなるのかも未知数である。
 そのような中で、自民党は3年間で再エネの実力(見通し)を見極め、電力制度改革による効果を検証する。そして10年をかけてあり得べき(経済影響や環境対策、エネルギー安全保障、安全という複合課題の最適解)エネルギー・ベストミックスの構築を図っていくという「現実的」な政策をとった。その際には、安全基準と管理体制の確立に基づく原子力再稼働(あるいは新設・増設)を含む最適なエネルギー需給構造を目指すというものである。並行して、石油をはじめとした石炭、天然ガスなど基幹的な化石燃料の安定的確保のために、戦略的な資源外交を展開することを明記し、かつ、日本周辺の海洋にあるとされている天然ガス、メタンハイドレードの開発に国家的なプロジェクトとして取り組むことも明記されており、ビジョンとの整合性、課題抽出、ならびに解決の妥当性はある。
 全体的に課題解決に向けた各政策の整合性はかなりとられているが、実行を担保するための政府の実行体制、ガバナンス、指導性や責任については、あまり記載されておらず、この点についてはマイナス要素をならざるを得ない。

 なお、今回の評価にあたっては、政権公約だけでなく、J-ファイル2012 自民党総合政策集も対象とした。

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