マニフェストのポイント
①社会保障・税一体改革のスキームのもとでの、子育て支援、医療・介護、年金各施策。具体的には、保育所利用者増、国民健康保険料軽減、年金受給資格期間短縮、低年金者への給付金支給など。
②公的年金一元化、最低保障年金創設を中心とする年金制度改革案は、社会保障制度改革国民会議の議論を経た上で実現をめざす。
③後期高齢者医療制度廃止、都道府県による高齢者医療の財政運営実施は、社会保障制度改革国民会議の議論を経た上で実現をめざす。
今回の民主党マニフェストは、実現がほぼ視野に入っているものと、実現の見通しが立っていないものとのいわば「同居」が最大の特徴である。
これは、菅政権から野田政権に連なる社会保障・税一体改革を反映していると考えられる。社会保障・税一体改革では、「社会保障改革」と銘打たれているものの、実際は、消費税率の引き上げが主たる目的であり、民主党オリジナルの社会保障看板政策(年金一元化、後期高齢者医療制度廃止、歳入庁創設など)の議論が深められることはなかった。
その代わり、消費税率引き上げという鞭をふるうための飴の意味も込め、現行社会保障制度のもとで、消費税率1%分、子ども・子育て分野をはじめ社会保障の充実がセットされることとなったといえる。他方、民主党オリジナルの政策は、検討課題へと棚上げされる形となった。
その消費税率1%分を使った充実が、マニフェストのポイントの①にも掲げた、各項目である。これらは、消費税率引き上げ(法案成立済み)と同時に実施されていくものであり、消費税率の引き上げが頓挫することなどがない限り、実現がほぼ見込まれるものである。形式的な要件はほぼ満たしているといえよう。
他方、民主党オリジナルの政策が、ポイントの②と③であり、これらは実現の目途が全くみえていない。2012年6月の民・自・公3党合意を踏まえ、11月に設けられた社会保障制度改革国民会議での議論を経た上で実現を目指すとマニフェストには書かれているものの、同会議は、②と③にイエスというともノーというとも分からない。
そもそも、民主党政権発足後、2009年マニフェスト時点では、理念レベルにとどまっていた②と③の具体的な議論が進捗した様子もみられない。国民会議の議論が終了すれば、すぐに実現可能な案を民主党が持っている訳でもないと考えられる。
次に、医療分野であるが、増大する社会保障費に対して医療保険制度全体の安定的な運営のため、保険者間の負担感の公平、国民健康保険の都道府県単位化など医療保険の一元的運用を進めるとしており、形式的には目標を掲げている。しかし、具体的な工程や道筋は描けていない。一方で、医師数や看護師数増についても引き続き取り組み、地域間の偏在についても適切な整備を進める旨、約束している。しかし、いつまでにどのような工程で行うかは記載されていない。 |