次の選挙で問われる財政政策とは

 10月25日の言論スタジオでは、土居丈朗氏(慶應義塾大学経済学部教授)、鈴木準氏(大和総研調査提言企画室長)、田中秀明氏(明治大学公共政策大学院教授)の3氏をゲストにお迎えし、「次の選挙で問われる財政政策とは」をテーマに議論を行いました。

次の選挙で問われる財政政策とは
 まず、代表の工藤は社会保障と税の一体改革における消費税の引き上げに触れ、「これによって財政再建の道筋が描かれたのか」と問題提起しました。これに対し3氏とも、超党派の合意による消費税の引き上げは評価できるが、財政再建の道筋は全くたっていないという見解を示しました。その中で土居氏は「社会保障の効率化・重点化が伴わなければ、財政再建の道筋は見えない」と述べ、また鈴木氏も10年後、20年後の「超高齢化社会でも社会保障制度と財政制度を維持出来るような改革が見えていない」と指摘しました。さらに、田中氏は増税の財源の一部を公共事業などに利用する議論について言及し、「増税に際して公共投資を増やすことになれば、増税の効果は数年で剥げ落ちる」と指摘しました。

 次に、財政再建の実現可能性について土居氏は、自身の試算に基づき「収支改善を全て消費税の引き上げで賄うとすれば25%前後の税率が必要だが、これは国際的にみても極端な高税率というわけではない」と指摘しました。一方で、田中氏は、「毎年首相が代わっているようでは、財政再建は数字の上では可能でも、政治的には極めて難しい」と述べ、痛みを伴う改革は国民のコンセンサスが得られないとの見解を示しました。なお、ここで視聴者から寄せられた「財政破綻したらどうなるのか」という質問に対して鈴木氏が回答し、「財政破綻懸念によって金利が上がれば、欧州のように金融システム危機と財政危機が複合的に起きかねない」と述べ、その結果、緊縮的な大増税や歳出削減が必要となり、「国民の生活水準を相当落とさないといけない」ことになると説明しました。

 続いて、財政破綻を回避するための施策について鈴木氏は、「日本が財政再建に取り組んでいるのだと把握できるように財政再建のルールを作る」などの信任を失わない知恵が必要であると述べました。また、土居氏は、「財政ルール以前に政党のガバナンスが機能していない」と述べ、首相・党首を頂点とした集権的な政治や政党のあり方を提案しました。

 今回の議論に先立ち言論NPOが実施したアンケート調査では、有識者87名から回答をいただき、「次の選挙で、財政再建のために政党や政治家が明らかにすべきこと」を訊きました。その結果、「財政再建を進める全体の道筋」という回答が最多の約8割を占め、それに続いて「歳出カットの具体的な方法(63.2%)」、「社会保障費増への対応(52.9%)」、「経済成長の進め方(52.9%)」となりました。

 このアンケート結果を受け、土居氏は「どの程度歳出削減をし、どの税収で賄うのか、いつまでに財政健全化を成し遂げるのか」を明示すべきと指摘しました。また、田中氏は、「少子高齢化を乗り切ることが本当のゴールだ。これをやれば高齢化社会を乗り切れるというメッセージを政治家が伝えてほしい。それが公正・公平なものであれば国民は納得する」と語りました。

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