2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(日本維新の会・外交・安全保障)

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■形式要件についての評価(1点/40点)  

 ※ここでは日本維新の会が11月29日に発表した「骨太2013-2016」(以下、「骨太」)を評価の対象とする。8月に発表された「維新八策」については、橋下氏が「公約ではない」と述べているため評価の対象とはしない。
 「骨太」には、「基本理念」として「維新八策の価値観、理念に基づいて、日本を賢く強くする」などと書かれているが、この国をどんな国にしていくのか、国際社会でどんな役割を果たすのか、理念の記述はない。外交・安全保障分野の個別政策を述べた箇所では「したたかな日本の構築」とあるが、これがいったいどのような状態を指すのかは全く不明である。
 明確な目標設定と認められるのは「集団的自衛権の行使や領海統治などを定める国家安全保障基本法の整備」のみである。
 達成時期、財源、目標実現のための工程や具体的な政策手段が明記されている政策はない。

 

 

■実質要件についての評価(9点/30点)

 この党の外交、安全保障政策は、この国が目指すべき理念から体系化されておらず、「現状認識」から課題を引き出し、基本方針を示し、政策実例を導き出している。
 「現状認識」として提起した課題は、「領土の不安、プレゼンスの不安」であり、その解決策として、「基本政策」として「日米同盟の深化」や「防衛力の強化」、「法と正義の主張」等を掲げている。
ただ、これらの政策は基本的に抽象的な記述が多く、具体的に何をどの程度、いつまで達成するものか判断できない。
 例えば、「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)戦略に基づく防衛力の整備」や「「実質的な」防衛費GDP1%枠の撤廃」の「実質的な」とは何を意味するのか不明であるし、またアジア太平洋において本当に勢力均衡を図るのであれば中国との軍拡競争は避けられないが、この点の認識も不明である。
 また、「骨太」は冒頭で「自主憲法の制定」を掲げているが、「骨太」のもとである「維新八策」には「憲法9条を変えるか否かの国民投票」と書かれているだけである。「相互依存戦略に基づく外交・安全保障戦略=経済・技術依存関係の構築」についても、「政策実例」は「他国のパワーを活用する。日本のパワーを他国に浸透させる。相互依存戦略の観点から日本の核燃料サイクル技術・武器技術の位置付けを検討」とのみ述べており、どのような状態を目指していったい何を行うのかが全く読み取れない。
 TPPについても「TPPは交渉参加、ただし国益に反する場合は反対」と述べているが、これだけではいわば当然のことを書いたにすぎず、日本維新の会が考える「国益」が明らかにされていない。
課題抽出についても、上述したように近隣諸国との領土に関する問題や日本の国際社会におけるプレゼンスの低下に対する不安・不満という、いわば「後ろ向き」な認識から出発しており、その先において何を実現したいのかという理念がないため、「前向き」な課題抽出ができていない。
更に言えば、仮にこうした対策で「不安」を埋めたとしても、その先に、どのようなどのような国としたいのか、何を実現したいのかという理念が全く明らかでない。
 課題解決の妥当性についても低い評価となる。領土の不安には、「実行支配力」や日米同盟の強化、「法と正義の主張」で中国を押し返すことしか考えていない。しかし、米国が日中間の紛争を期待しているとは限らず、中国と軍拡を競うことを現在の日本が単独でできることも難しく、また東アジアの他の国々との関係も損ねることも明らかである。
 「法と正義の主張」についても、そもそも尖閣諸島問題について中国が日本に促されて国際司法裁判所に提訴すること自体考えにくく、尖閣諸島問題や日中関係の改善の手法としては稚拙に過ぎる。
 台頭する中国に対して、日米同盟や各国との関係を梃子にし、米国や東アジア諸国と共同で対処していく、そのために具体的に何をするのか、という発想は皆無である。
 課題解決に向けたガバナンスについても、石原代表や橋下代表代行を含めた党員の間で政策に関する発言の食い違いが連日報道されるなど、まず党内で政権公約に関する意思統一がなされているのか疑問である。政権公約そのものも曖昧であり、責任を持ってこれらの政策を行うのか、それすらも疑わしい。

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