2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(自民党・外交・安全保障)

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■形式要件についての評価(12点/40点)  

 マニフェストの外交・安全保障分野では、「外交を、取り戻す。」と題し、「危機的状況に陥ったわが国の「外交」を立て直します。」として、「国民の生命・領土・美しい海」の保護、「自由・公正・法の支配などの世界の普遍的な価値」に基づいた国益を守るための戦略的外交の展開、「国家の独立と平和を堅守する総合的な安全保障政策」の推進、のため39項目にわたる個別の政策を掲げている。
 また、憲法改正や「国防軍」の保持、集団的自衛権の行使についても記述があるほか、「経済成長」の章には「EPA・FTAの推進」及び「投資協定・租税協定締結の促進」があり、「環境」の章には「温室効果ガス削減のための日本初の新しい世界的枠組みの提唱」がある。
 「自由で豊かで安定したアジアの実現」といった理念が個別に掲げられているものの、民主党から政権を「取り戻」し、外交を「立て直し」した後、マニフェストに掲げた政策によって、どのような総合的な外交戦略を描き、世界の中でどのような国家を目指すのかという大きな目的や理念の記述はない。
 数値目標を伴う政策はない。ただ、「補給支援特措法」「ODA基本法」「国家安全保障基本法」「国際平和協力法」等の制定や自衛隊法の改正、「国家安全保障会議」「領土・主権問題対策本部(仮称)」の設置、「拉致被害者全員の帰国」の実現といった個別の目標が明記されているものはおよそ4割である。
 達成時期及び財源の裏付けが明記されている政策はない。
 目標実現のための具体的な工程や手段の記述があるものは、「国家安全保障基本法の制定」など、全体のおよそ5割強である。

 

 

■実質要件についての評価(31点/30点)

 「強固な日米同盟の再構築」と「自由で豊かで安定したアジアの実現」を掲げ、アジア諸国との間では「それぞれ二国間関係にとどまらず、アジアと世界の平和、安定、発展にともに貢献する幅広い協力関係」を構築するとしている点に加え、「米国の新国防戦略に対応し、(中略)同盟国、友好国との防衛協力を進め、アジア太平洋地域全体の抑止力を高めます」とし、また、そのための手段として、ガイドラインの見直しや各種協定の締結、集団的自衛権の見直し等を挙げている点は評価できる。
しかし、沖縄の負担軽減については「在日米軍再編を着実に進める」「米軍基地の整理・縮小・統合」等を推進するとしか述べていない。「普天間飛行場の固定化に対する沖縄の懸念を払しょくする」「新たな負担を被る地方自治体には特別な配慮・施策を講じます」など、負担軽減の具体的な手段が全く不明であり、アジア地域における米軍のプレゼンスの再配置という発想どころか、「県内か県外か」の視点や飴としての地域振興策といったかつての発想がいまだに見受けられる。
 上述した「日米同盟の再構築」「自由で豊かで安定したアジアの実現」のほか、国際協力活動の推進や資源外交の強化、EPA・FTAの推進や危機管理体制の強化など、個別の政策の方向性は総じて妥当であるが、これらの施策の実施によってどのような国家を目指すのか、という理念が明確でない。また、手段についても、法律の制定で実現できる施策については記述があるが、「ODAの充実」といった財政的裏付けが必要な施策や、安保理改革・核軍縮といったマルチ外交については不明確な記述に終始しており、達成の時期も示されておらず、課題解決に向けた実行の体制や責任があいまいである。
 TPPについては、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対します」とのみ述べ、各論の部分でも「わが党として判断基準を政府に示している」として6項目の「判断基準」を明記しているだけで、政権に就いた後にどうするのか全く不明であり、公約としても腰が引けている。

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