2012年衆議院選挙 マニフェスト評価(日本維新の会・経済政策)

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■形式要件についての評価(7点/40点)  

 日本維新の会のマニフェストは、「骨太2013-2016」と銘打った箇条書きの項目の羅列があるだけである。本来、こうした羅列は政策のアイデアとしか判断できず、その実行を担保する政党のガバナンスも疑わしいが、今回はあえてこれらを国民への説明と判断し、言論NPOの評価基準に基づいて評価する。
 まず基本的な考え方として、「経済、財政を賢く強くする」と書いている。少子・高齢化社会下での日本経済が成長できるために、「したたかさ」が必要という主張は日本が直面する課題として理解できるが、政策に対する姿勢を示しているのみで、これらをどういう時間軸を持ってどう実現するのか、その全体像が語られていない。
 15項目の基本方針から「競争力強化路線」ということは分かるが、基本方針をどう政策として組み合わせて体系化するのかは、ここでは語られておらず、十分に政策がこなれていない。
目標設定としては、「名目成長率3%以上、物価上昇率2%」というマクロ経済目標があるのみで、それらを達成するための政策手段や明確な目標が設定されていない。
 個別政策として掲げられているのは、「政府・日銀の役割分担を再構築するための日銀法改正」「TPP参加、ただし、国益に反する場合は反対」「法人税・所得税の減税」「規制緩和」の4つで極めてシンプルだが、必要な政策課題を挙げている程度で具体性に乏しい。規制緩和ではその政策の例として「市場メカニズムを重視した最低賃金制度への改革、解雇規制の緩和、混合診療の解禁」などを挙げているのみである。個別政策については、達成時期、財源ともに不明である。
 具体的な、政策手段として記述があるのは、金融政策に関して、「政府と日銀の間で物価目標に関するアコードを締結、さらには日銀法改正により政府と日銀の役割分担・責任の所在を明確化する」とあるが、日銀に対して何を求めるのか、日銀法をどのように改正するのかはまったく不明である。法人減税、所得減税の具体的中身も不明である。規制緩和についても、目的、期待される効果の明示がない。

 

 

■実質要件についての評価(16点/30点)

 減税と規制緩和の組み合わせは、明らかに「小さな政府」志向であるが、そうしたビジョンは必ずしも具体的に示されていない。「公共工事拡大路線とは異なる経済成長を目指す」として、「競争力強化」の必要性と「農業・医療・福祉・保育の成長産業化」を謳っている点は概ね妥当な認識といえる。特筆されるのは、競争力の強化策として、「法人税減税、再投資税額控除制度導入」を挙げている点である。また、「競争政策三点セット」として、①補助金からバウチャーへ、供給者から消費者優先へ、②新規参入規制の撤廃、規制緩和、③敗者の破綻(はたん)処理などを掲げており、産業の新陳代謝を促す必要性を認識している点は、一定の評価ができる。
 さらに、新規市場の育成策として、「政府・自治体の予算事業を民間に開放・新規参入を促す」ことの他、「農業を成長産業化」する具体策として、①戸別所得補償制度の適用対象を専業農家に限定、②農協法改正、独禁法適用除外の適用範囲の見直し、③農業版RCC(整理回収機構)設置、また「医療・福祉の成長産業化」として、混合診療の解禁、さらに「保育の成長産業化」として、保育バウチャー制度導入などの具体策を掲げている点は、既存政党の掲げていない大胆な方向性を示すものとして一定の評価ができる。
 ただし、金融緩和と法人減税・所得減税という伝統的な金融財政政策で、この国の抱えるデフレ脱却、国際競争力低下という深刻な問題を打開できるという認識は甘く、妥当性を欠く。また、個々の政策について、財源の明示がまったくない点は、財政健全化との整合性も見えず無責任である。
太陽の党との合併で、脱原発、TPPといった重要課題では、独自色が薄められ、曖昧な公約に変わっている点はマイナスに評価せざるを得ない。個々の政策は、パンチ力のあるものが掲げられているが、マニフェストとしての体系性を備えているとはいえない。課題認識も十分示されず、政策実例として列挙されている点は、マニフェストとしての基本要件を満たしているとはいえない。
 日銀法改正による金融緩和強化やTPPに対する慎重スタンスへの転換、経済成長率目標などは自民党のマニフェストに酷似しており、総選挙後の政権の枠組みを意識しているように見える。規制緩和について、混合診療の解禁や解雇規制の緩和など大胆な政策が盛り込まれているのは、改革を目指す姿勢が鮮明に現れているという意味で、日本維新の会らしいが、それによって、いかに新規産業が育成されるのか、その道筋は見えない。
 総じてこれらの対策はアイデアとしては、課題に向きあっており評価できるが、具体性に乏しく、かつ合併により政策的な合意が図られない個所も散見され、これらが本当に政党の政策として機能するかも、現時点では疑わしい。

 政策実行体制やガバナンスについては、「内閣の機能強化」「中央集権の打破」が唱えられているが、具体的な仕組みの提案があるわけでもなく、実効性は不透明である。

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