次の選挙で問われる社会保障制度改革とは
10月18日の言論スタジオでは、鈴木亘氏(学習院大学経済学部経済学科教授)、西沢和彦氏(日本総研主任研究員)をゲストにお迎えし、「次の選挙で問われる社会保障制度改革とは」をテーマに議論が行われました。
まず、代表の工藤が「社会保障と税の一体改革法案が可決し、消費税増税が決まった。この評価をしてもらい、社会保障の争点を明確にする」と問題提起しました。それに対して両氏とも、社会保障制度改革は先送りされ、消費税増税による財政健全化が目的だったとの見解を示しました。その中で鈴木氏は、「少子高齢化の費用は年々増加するが、消費税は景気が上がっても増えない」と述べ、膨張する社会保障費に充てる適切な財源ではないと指摘しました。一方で、財政健全化について西沢氏は、消費税増税の一部が地方と公共事業に使われる可能性に言及し、「本当に財政健全化に寄与するのは半分」と述べました。また、社会保障制度の在り方について鈴木氏は、「2023年には3人で1人、2060~70年には1人で1人を支えることになる」と述べ、「消費税、保険料など全ての負担が将来どれだけ上がるのか」を提示し、全体的な負担と給付を明らかにする必要性に言及しました。
続いて、現行の年金と医療制度の課題とその打開策について議論が及びました。年金制度について、西沢氏は雇用形態または家族形態などの構造の変化と財政に問題があると述べ、これを踏まえて民主党は過剰給付の抑制を含めた改革を検討したが、結局は「給付するだけになった」と指摘しました。また、鈴木氏は、積立金の取り崩しと運用損によって前提が崩れ、「2030年に年金の積立金が枯渇する可能性がある」と述べ、年金会計の深刻な状況を政府が国民に開示する必要があると述べました。
他方で、医療制度では、西沢氏は「医療資源の地域間の偏在」と年金同様に「財政の持続可能性」に問題があると指摘しました。前者について、現行制度では診療報酬の改定のように価格に主眼が置かれた政策だと述べ、今後は「医者に移ってもらう」などの量的な是正が必要だとの見解を示しました。後者について、組合健保が後期高齢者医療制度あるいは国民健康保険などを支えていることに言及し、ブラックボックス化している医療制度を「保険料の使い道が分かるようにシンプルに変えていくべき」と語りました。
今日の議論に先立ち、言論NPOの実施した緊急アンケート調査では、有識者81人から回答をいただきました。その設問で「次の選挙で政治家や政党が社会保障の問題で何を明らかにすべきか」を訊き、51.3%の半数余りの人が、政治家などに「現状の社会保障制度の維持か、抜本的改革を行うのかについての意思と具体策」を求めました。このアンケート結果を受けて西沢氏は、政治家は財源を「配るのではなく、負担を切り分ける」という「少子高齢化モード」に切り替わる必要があると述べました。なお、鈴木氏は、政策の実行プロセスの開示およびマニフェストの党内での共有の必要性を指摘し、財政検証は政治家より中立的な立場の「言論NPOなどが実施すべき」と言及しました。
最後に、代表の工藤は、超高齢化社会で社会保障財政が維持できない状況を覚悟すべきと述べ、「批判するだけでなく、課題解決が出来るようする。有権者が社会保障の問題を自分たちのものとして考えなければならない局面にいる」と締めくくりました。